2024-05-22

中国:意見募集で公開された「商標権侵害案件違法経営額計算弁法」 - 北京路浩

 中国国家知識産権局(CNIPA)は、4月11日に「商標権侵害案件違法経営額計算弁法」の意見募集稿を公開し意見募集を行った。
 中国は制度上、行政機関による商標権侵害行為に対する取締が可能である。その際、違法経営額の算定は、処罰を決定するのに重要な根拠となるにもかかわらず、現行の商標法及びその実施細則には、違法経営額の算定に対し、原則的な規定しか設けておらず、詳細な規定を欠く。比較的に複雑な案件を処理する際に、その侵害額は焦点となる場合もある。この現状を受け、知的財産権に対する法的保護を強化させ、行政機関による法執行の専門性を向上させ、法執行の基準を明確させ、行政罰の根拠の透明性と予期可能性を増加させ、商標権に対する保護の実践上の要請に応じて、本規範を制定した。
 本稿は、当意見募集の内容を抜粋し、簡単な紹介を行う。

【第4条】違法経営額とは、当事者が商標権侵害行為を実施するにあたっての侵害商品の価値または侵害となるサービスを提供することによる営業収入の総額を指す。

【第5条】売却済みの侵害商品の価値は、実際の販売金額に準ずる。
まだ売却されていない侵害商品の価値について、まず侵害発覚時点で既に確定された売却済みの侵害商品の実際の販売価格の平均値で計算する。実際の販売価格の平均値が算定できない場合、被侵害商品のメーカー記載の推奨販売価格に準ずる。
 実際の販売価格の平均値が算定できず、且つ被侵害商品のメーカー記載の推奨販売価格がない場合、被侵害商品の市場における中間価格で計算する。
 製造済みだが、まだ侵害商標の標章を貼り付けていない商品に対し、もし当該商品は他人が所有する商標に対する侵害であると認定するのに確実・十分な証拠がある場合、当該商品の価値は違法経営額に算入する。

【第7条】商標専用権侵害するようなサービス提供の違法経営額は、当事者が権利侵害と判断された期間内に、権利侵害行為により得られたすべての営業収入である。
 サービス提供の領収書などの証拠のみがあり、サービスが履行された証拠がない場合、領収書などに記載の金額で計算する。

【第9条】無料で贈呈される品物が、他人の登録商標専用権に対する権利侵害に当たる場合、当該商品を実際購入する際の金額または生産するためのコストで計算する;実際購入する際の金額や生産するためのコストが算定できない場合、または当該商品は非標準製品の場合、被侵害商品の市場における中間価格で計算する。

【第10条】リファービッシュ製品が他人の登録商標専用権に対する権利侵害に当たる場合、侵害商品の全体価値で計算する。
 リファービッシュ製品自身が他人の登録商標専用権に対する権利侵害に当たらず、その部品または付属品のみ他人の登録商標専用権に対する権利侵害に当たる場合、権利侵害に当たる部品または付属品の価値で違法経営額を算定する。

【第12条】他人の登録商標専用権に対する権利侵害に対し、故意で便宜供与する場合、便宜供与することで得られた収入で違法経営額を算定する;収入がない場合、違法経営額がないとされる。

【第13条】レンタルサービスで他人の登録商標専用権に対する権利侵害に当たる場合、レンタルサービス提供することで得られた収入で違法経営額を算定する。

【第14条】宣伝において他人の登録商標専用権に対する権利侵害に当たる場合、違法経営額がないとされる。

【第15条】商標の使用許可人と被許可人が共同で他人の登録商標専用権に対する権利侵害をする場合、本弁法の第5条、第7条が規定する方法で違法経営額を算定する。
 商標の使用許可人が被許可人の侵害行為を補助した場合、許可料で違法経営額を算定する;無償使用許可の場合、違法経営額がないとされる。

【第16条】前記規定のいずれもを適用しても実際の違法経営額を算定できない場合、違法経営額がないとされる。

【第17条】他人の登録商標専用権に対する権利侵害を複数回実施し、且つ行政機関による処分を受けていない場合、違法経営額は累計する。

【第18条】売上はサクラ・やらせレビューなどの虚偽の手段で増加させたものであると当事者が十分な証拠をもって立証できた場合、違法経営額に算入されない。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター)