2024-05-21

中国:最高人民法院が公表した2023年度中国10大知識産権案件と50 件の知識産権典型案例 - 北京路浩

4月26日の世界知識産権日の到来を受け、最高人民法院は、中国の知識産権に関するいくつかの重要発表を行った。その内の一つは、2023年中国10大知識産権案件と50 件の知識産権典型案例の発表である。

2023年度の中国10大知識産権案件は以下の通り;

1.商標「西门子」(Siemens の中国語の当て字)をめぐる不正競争事件
〔最高人民法院(2022)最高法民终 312 号民事判決書〕

2.商標「拉菲」(Lafite の中国語の当て字)をめぐる不正競争事件
〔最高人民法院(2022)最高法民终 313 号民事判決書〕

3.「顔認証」に関する発明専利の無効審判段階の補正をめぐる行政訴訟事件
〔最高人民法院(2021)最高法知行终 556 号行政判決書〕

4.トウモロコシ植物新品種「丹玉 405 号」に対する権利侵害紛争
〔最高人民法院(2022)最高法知民终 2907 号民事判決書〕

5.ナビゲーションマップに関する著作権侵害事件
〔北京市高級人民法院(2021)京民终 421 号民事判決書〕

6.違法にキャッチしたデータを転売することをめぐる不正競争事件
〔広東省高級人民法院(2022)粤民终 4541 号民事判決書〕

7.医療機器用ソフトウェアに対する著作権侵害事件
〔上海市第三中級人民法院(2023)沪 03 刑初 23 号刑事判決書〕

8.医薬品原材料に対する技術秘密侵害事件
〔江蘇省南京市中級人民法院(2019)苏 01 民初 3444 号民事判決書〕

9.ウイクワードの商標登録をめぐる不正競争事件
〔浙江省温州市中級人民法院(2023)浙 03 民初 423 号民事判決書〕

10.APP 利用際の青少年モードをめぐる不正競争事件
〔天津自由貿易試験区人民法院(2022)津 0319 民初 23977 号民事判決書〕

50件の知識産権典型案例と案件全体の傾向

2023 年度の知識産権典型案例計50件の内、民事案件は45件であり、行政案件の件数2件、刑事事件3 件である。さらに詳しく分けると、民事案件の内、専利権の所属・権利侵害・保護範囲に関する紛争は5件、商標権侵害紛争は9件、著作権の所属・権利侵害紛争は10件、不正競争・独占紛争は15件、植物新品種や技術契約紛争などは6件である。

2023年度の10大知識産権案件と50件の知識産権典型案例を総じて見ると、以下の特徴や傾向が見出せる。

第一に、科学技術のイノベーションを厳格に保護すること。例えば、植物新品種の権利侵害に対し、懲罰的賠償を命じることで、農業分野に関する研究開発を堅実に守る決意を示した。
第二に、社会が関心をもつ問題に着目し、民衆の利益を確実に守ること。例えば、APP 利用際の青少年モードをめぐる紛争は、青少年の利益を大事にし、サービスの提供者に対し、青少年育成の社会責務を果たすよう促した。
第三に、新技術・新業態・新分野における裁判規則を積極的に探ること。例えば、ナビゲーションマップに関する著作権紛争や不法にキャッチしたデータを転売することをめぐる紛争は、正にこの類の事件である。
第四に、外資系企業に対しても、平等な保護を与え、グローバル的な商業環境を創設すること。例えば、商標「西门子」をめぐる不正競争事件、商標「拉菲」をめぐる不正競争事件や「ミシュラン」商標権侵害紛争の当事者は、皆外資系企業となる。
第五に、隣接部による保護を強化し、保護の全面的な包囲網を構築すること。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター)