2024-05-10

EU:お家騒動の商標 - Knijff Trademark Attorneys

 商標紛争は個人的な問題に発展することがあるが、最近EUIPO(欧州連合知的財産庁)に提起された「Rubettes」商標に関する取消請求はその顕著な例である。

 ルベッツ(The Rubettes)は、「シュガー・ベイビー・ラヴ」のヒットで大きな成功を収めた英国のポップバンドだが、それ以降の彼らの歴史は、バンド内の対立と法廷闘争に彩られてきた。

 1999年、オリジナル結成メンバーの一人であるビル・ハードが、「The Rubettes」という名前で別のバンドを結成。これにより、英国でビル・ハードとアラン・ウィリアムズ(リードボーカル)の間で訴訟問題が起こり、2002年に和解が成立した。2002年以降、アラン・ウィリアムズは「The Rubettes featuring Alan Williams(ザ・ルベッツ・フィーチャリング・アラン・ウィリアムズ)」として、ビル・ハードは「The Rubettes featuring Bill Hurd(ザ・ルベッツ・フィーチャリング・ビル・ハード)」として活動することが合意された。この裁判で、ビル・ハードは破産したと報道されたが、現在に至るまで「ザ・ルベッツ・フィーチャリング・ビル・ハード」として活動を続けている。さらに「The Rubettes Featuring John, Mick, and Steve(ザ・ルベッツ・フィーチャリング・ジョン、ミック&スティーブ)」という名前もあった。

 さて今回は、EUIPOにおけるアラン・ウィリアムズとギタリストのミック・クラークの紛争である。アラン・ウィリアムズはミック・クラークが出願した「Rubettes」商標に対して取消を請求した。この取消請求でアラン・ウィリアムズは、ミック・クラークが 「アラン・ウィリアムズの存在を無くさせる」ためだけにこの商標を出願したと主張した。

 アラン・ウィリアムズの主張は、ミック・クラークは長年にわたって歩合制で雇われていたミュージシャンにすぎず、この名前に対する権利はまったくないというもので、また、アラン・ウィリアムズは、「The Rubettes feat. Alan Williams(ザ・ルベッツ・フィーチャリング・アラン・ウィリアムズ)」という標章を使用しているが、これは争われている「Rubettes」商標と類似するものだとも主張した。

 ミック・クラークは、オーストラリアに移住したアラン・ウィリアムズ抜きで仕事をするためには、自身を含む残りのバンド・メンバーが活動を継続する必要があったため、英国で商標を出願し、その後欧州商標を出願したと反論した。 

 EUIPO取消部は、すべての事実と証拠を総合的に判断して、争われている欧州商標を出願した際、ミック・クラークは「Rubettes」商標に関するアラン・ウィリアムズの権利を奪う目的があったと考えるのが妥当であるとの判断を示した。

 取消部は、ミック・クラークがなぜ「ザ・ルベッツ・フィーチャリング・ジョン、ミック&スティーブ」や「The Rubettes featuring Mick Clarke(ザ・ルベッツ・フィーチャリング・ミック・クラーク)」ではなく、「The Rubettes」や「Rubettes」という商標を登録しようとしたのか不可解であり、欧州商標を出願した後、ミック・クラークはアラン・ウィリアムズとその代理人に対して、彼らの持つ資料や素材から「Rubettes」への言及を削除するよう圧力をかけ始めたことは、ミック・クラークの動機と潜在的な悪意に対する懸念をもたらすものだと考えた。

 取消部は、以上のことを考慮し、アラン・ウィリアムズが提出した証拠と主張がミック・クラークが行った悪意を十分に立証したと結論付けたのだが、これで一件落着となるのだろうか…?そうは思えない。

本文は こちら (Rubettes’ Trademark Filed “with the Sole Intention to Ruin the Applicant’s Existence”