2024-05-24

EU:エコ、サステナブル、オーガニック…誰が「グリーン」商標を登録できるのか? - Novagraaf

 持続可能な製品への需要が高まるにつれ、「グリーンであること」を権利主張するブランドも増えているが、誰でも「グリーン商標」を保護できるのだろうか。Niké MionがEUの出願人向けに実践的なガイダンスを提供する。

 環境と持続可能性への関心が高まるにつれ、パッケージやラベルにGreen、Eco、Sustainable、Pure、100% Natural、Organic(有機の)、Conscious(意識的な)、Environmentally Friendly(環境にやさしい)、Zero、Climate Neutral(気候中立)といった用語を使用する標識も増えている。このような表示の使用は、「持続可能性や環境主張」(以下、「グリーン主張(green claims)」)に該当する。なぜなら、このような表示の使用は、例えば、その製品が持続可能な原料を含むとか持続可能な方法で生産されているという印象を与えるからである。
 当然のことながら、持続可能な製品に対する需要の高まりにより、「グリーン商標」の出願も増加している。欧州知的財産庁(EUIPO)が2023年2月に発表した「グリーンEU商標」報告書では、1996年から2021年の間、特に2019年から2021年の間に、「グリーン主張」を伴うEU商標(EUTM)の数が大幅に増加していることが明らかになっている。
 このような傾向は、グリーンエネルギーやリサイクルなど、持続可能性に直接関連する製品やサービスだけでなく、これらとは直接関係のない製品やサービスに対しても増えている。しかし、この「グリーン」ブランドの増加が環境にも良い貢献するかどうかはわからない。

グリーンディールからグリーン商標へ
 欧州グリーンディール(注:2019年に欧州委員会は欧州グリーンディールを最優先課題と位置付けた)は、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目指している。グリーンディールの内容のひとつは、グリーンウォッシング(環境配慮をしているように装いごまかすこと)やその他の誤解を招く製品情報の禁止である。この目的のため、欧州議会は2024年1月に新しい指令を採択し、次のように規定した; 
* 根拠のない一般的な環境主張(オーガニック、エコ、環境に優しいなど)の禁止
* 持続可能性ラベル(持続可能な原料調達、環境・社会などに配慮した製品であると第3者機関から認証を受けたことを示す国際認証ラベル)は、承認された認証制度に基づくか、公的機関によって確立された場合のみに許可される
言い換えれば、商標権者は、消費者を惑わせてはならず、グリーン商標の使用は検証可能な情報源からの情報に裏付けられなければならないと認識すべきである。 

商標登録要件
 EU商標法では、標識が十分な特徴を有し、その標識が使用される商品について記述的でなく、指定された商品・サービスについて使用可能である場合、その標識は商標保護の対象となる。さらに重要なことは、その標識が誤解を招くものであってはならないということである。これらは、商標出願が評価される絶対的拒絶理由だ。

*識別力
 前述した「グリーン主張」の多くは、純粋に記述的であり識別力が不十分なため、それ自体では商標登録の対象とはならない。例えば、欧州の判例法では、「eco」という用語はecologicalの略であり、「グリーン」は環境に優しい製品の総称であることが確認されている。それにもかかわらず、識別力のない商標に特徴的な(図形など)要素を加えることによって登録を得ることは可能だ。この場合、商標全体として(のみ)の保護が得られ、登録された商標の図形表現に類似する標識の使用に対して訴訟を起こすことができる。

*欺瞞的/誤解を招く
 商標出願が、商品・サービスの性質、品質または地理的原産地について公衆を欺くおそれがある場合にも拒絶されることがある。例えば、商標が商品の組成や原産地などに関して誤った印象を与える場合、欺瞞性が認められる可能性がある。このような場合、商標は登録を拒絶される。
しかし、このようなケースに該当するかどうかを判断するために、商標は出願された商品・サービスとの関係で検討される。将来起こりうる状況は考慮されない。ABC Green PFASやXYZ Biological Uraniumのように、「グリーン主張」がありそうもない明らかな場合を除き、商標権者による十分な「グリーン主張」の裏付けをEUIPOは評価していないので、グリーン商標が拒絶されるかどうかはまだ分からない。

グリーン商標と証明商標
 証明商標は、ある製品が客観的に測定可能な基準を満たしていることを示す商標である。消費者の目から見ると、証明商標は、多少なりとも独立した機関が、客観的に測定可能な側面について問題の製品・サービスを検査したことを保証するものである。環境保護や持続可能性の文脈では、すでに数十の証明商標が存在し(グリーンブランドやフェアトレードのロゴなど)、そのようなグリーン商標の使用は、その使用に課される条件が満たされる場合に限られる。 

グリーン商標を登録すべきか?
 あるブランドを「グリーン主張」と組み合わせて使用する場合、選択した商標が使用可能かどうか、またその商標を保護できるかどうかについて、早い段階で助言を求めてください。図形商標は登録しやすいかもしれないが、誤解を招く可能性のある用語を避けることで、拒絶されるリスクを回避することが重要だ。

本文は こちら (Eco, sustainable, natural, organic… who can register “green” trademarks?)