2024-06-05

ラオス:知的財産に関する法律改正を公布 - Tilleke & Gibbins

 2024年3月1日、ラオス官報は、2023年11月20日付で新たに改正された2023年知的財産法を公布した。
 2007年以前の知的財産は、商標、特許、小特許(petty patents)、意匠について、首相官邸が発行する政令によって保護されていた。2007年に制定された知的財産法は、産業財産権、植物新品種、著作権および関連する権利を保護する包括的な法律を導入し、大きな転換をもたらした。
 2007年以降、新しい知的財産法の制定は、必ずしも既存の知的財産の枠組みを大幅に改正するものではなかった。例えば、2017年11月15日付の改正知的財産法第38号(2017年知的財産法)では、とりわけ、審査官による商標出願審査後の第三者による異議申立制度を導入したくらいだ。

 2023年知的財産法は、ラオスの知的財産法のさらなる変更をもたらした。その中でも特に注目すべきものを以下に紹介する。

周知商標(well-known trademark)
 2023年知的財産法は、商標が周知であることの立証責任を緩和するようである。
 2017年知的財産法では、商標が周知商標として認められるためのいくつかの基準が規定されており、これによりラオスでは登録がなくても商標が保護される。その基準の一つは、商標が付された商品・サービスが 「領土内」で広く流通していることであった。しかし、法律は「領土内」という用語を定義しておらず、解釈の余地が残されていた。その結果、この曖昧さにより、周知商標としての適格性が制限され、ラオス国内での保護が制限される可能性があった。
もう一つの基準は、国内の消費者が商標の評判を広く認識し、認知していることであった。しかし、「国内」という文言には解釈の余地があった。
 2023年知的財産法では、「領土内」や「国内」という文言が使われなくなり、基準をラオス市場のみに限定していた可能性のある解釈に関する疑念が解消された。従って、ある商標が周知商標であることを証明するために、製品が世界的に広く流通しているという証拠を用いることができるようになり、さらに、審査官は他の基準も考慮することができる。しかし、2023年知的財産法は、全ての基準を満たさなければならないのか、一部の基準のみが必要なのかは明記されていない(※1)。

産業財産権の取消
 2023年知的財産法は、知的財産権を取消すための2つの手続きを規定している。2017年知的財産法同様に、第三者は知的財産公報に登録が公告されてから5年以内に商工省(MOIC)に取消請求を行うことができる。さらに、新たな改正により、「正しくない(not correct)」または悪意(bad faith)で行われたとみなされる商標、意匠、地理的表示の登録を取消す手段が明示された。MOICは、これらの文言を定義しておらず、悪意に関しては2023年知的財産法の以前も以後も、法律上の具体的な権限規定がないにもかかわらず、実務上、審査官は登録前に出願の善意(good faith)を評価している。2023年知的財産法では、当局に登録後に悪意を評価する権限が明示的に付与された。これは、ラオスが商標スクワッター(trademark squatter)のような不誠実な出願人の避難所になるのを防ぐために与えられた知的財産局の権限と思われる。

権利の消尽
 2023年知的財産法では、権利の消尽という概念が導入され、ラオスの知的財産法制において最も注目すべき変更となる可能性がある。同法の運用上の文言は、商標を付した製品が販売された時点で商標権者の権利が消尽することを示唆しており、これにより商標権者は製品の使用や再販を制限できなくなることを示している。
 この点から、並行輸入品に対する現地当局の姿勢について、歴史的にラオスは並行輸入に対して寛容な姿勢を維持してきたが、その合法性には疑問が残るかもしれない。国内で製品を販売する権利を持つライセンサーから指定されたライセンシーへの特定のライセンスが必要な製品(医薬品や自動車など)は例外として、並行輸入の合法性は不透明のままであった。
 2023年知的財産法では、並行輸入の合法性を主張するために引用される可能性のある条項は改正されていない。法律上は、商標権者や地理的表示の権利者は、登録商標と同一または類似する商標を付した商品を第三者が使用、販売、輸入または輸出することを阻止することができる。これは、前述の権利消尽に関する規定と矛盾する可能性があり、今後さらなる明確化が必要になるだろう。

地理的表示
 地理的表示の保護は、登録日からではなく出願日から開始される。

一般的禁止事項
 一般的な禁止事項として、2023年の知的財産法では、知的財産権者の許可なく、商業的利益のために他人の知的財産権を偽造、改変、使用することを明示的に禁止している。従って、ラオスでは、営利を目的とせず、個人的な使用を目的とした模倣品の使用は認められる可能性がある。

(※1) 基準は以下の通り: (1)取引、商品・サービスへの商標の使用、広告での商標の使用を通じて、関連する公衆が商標を認知していること、(2)商標が付された商品・サービスが広く流通していること、(3)商品の販売またはサービスの提供が十分な量であること、(4)商標が定期的かつ継続的に使用されていること、 (5)品質、サービス、評判などの要素に基づく、商品・サービスと共に商標を使用することに伴う信用、(6)消費者が商標の評判を広く認識していること、(7)主たる商標の広告や流通への投資など、商標への投資価値が高いこと

特許、意匠、商号、著作権などを含む全文は こちら (Laos Issues Updated Law on Intellectual Property)