2024-06-07

中国最高裁判所が知的財産権案件の法律適用に関する年度報告書(2023)抜粋を発表 - CCPIT

中国最高裁判所が4月25日、『知的財産権案件の法律適用に関する年度報告書(2023)抜粋』(以下、抜粋という)を発表した。抜粋は最高裁が2023年に裁判終了した知的財産権案件に基づいて41の法律の適用問題をまとめ、「知的財産権濫用の認定と対応」などについて明確にした。

 「知的財産権濫用の認定と対応」の法律適用について、(2023)最高裁知民終235号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。知的財産権の行使は信義誠実の原則に準拠し、かつ他人の合法的権益を損なってはならない。知的財産権侵害を受けたとき、権利者は法に依り訴権を行使することができるが、訴権の行使は信義誠実の原則に準拠し、誠実に慎重にすべきである。「誘導侵害」、「罠掛け証拠収集」、「誤解を招く和解」、「故意の二重訴訟」などの形で知的財産権を濫用する権利者に対して、裁判所は効果的な措置を講じて規制を加え、情状によっては『知的財産権侵害訴訟における原告の権利濫用を理由とする被告の合理的支出賠償請求問題に関する最高人民法院の返答書』に準拠して、相手方に訴訟の合理的支出を負担するよう命じることができる。

 「懲罰的賠償倍数の確定の要因」の法律適用について、(2022)最高裁民終209号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。他人の登録商標及びブランドの知名度と影響力を知りながら、その類似商標を大量に使用して同一の事業活動を行った場合、商品の出所を混同させ、他人の知名度を不正利用する主観的悪意があると認定されるべきである。権利侵害の規模が大きく、範囲が広く、権利侵害による収益が非常に高い場合、権利侵害は深刻な情状に当たると認定されなければならない。前記の主観的な悪意、深刻な権利侵害情状は懲罰的賠償倍数の確定の重要な要因として考量されなければならない。

 「権利保護一括案件における合理的支出賠償請求の合理性の認定」の法律適用について、(2022)最高裁民再274、275、276、277、278号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。合法由来の抗弁が成立し、そして権利者が権利保護を一括で求める場合、裁判所は権利侵害行為の状況、権利侵害した販売者の主観的要因、権利者の合理的支出の証拠などの具体的な情状を総合的に考量し、合法由来の抗弁制度の立法趣旨に基づいて、権利者の合理的支出賠償請求の合理性を認定すべきである。

 「WeChat公式アカウント・公式ウェブサイト上の商標侵害行為の実施者の認定」の法律適用について、(2022)最高裁民終146号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。WeChat公式アカウント・公式ウェブサイトの事業者が権利侵害者であることを証明することが困難であるが、当該公式アカウント・公式ウェブサイトに宣伝された標識、商品と内容が権利侵害者を指し示すことが証明でき、且つ侵害者が当該宣伝活動の受益者である場合、裁判所はこれをもって権利侵害者が当該公式アカウント・公式ウェブサイトを介して権利侵害製品の宣伝・普及活動を実施したと認定することができる。

 「挙証妨害規則下の賠償額に対する裁量」の法律適用について、(2022)最高裁民終146号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。権利侵害者が挙証妨害を行った場合、裁判所は権利者側の主張と証拠を参考にしながら賠償額を定める際に、関係証拠を包括的かつ客観的に調べ、権利侵害行為の期間、回数、権利侵害者の主観的な悪意などの要因を総合的に考量しなければならず、権利侵害者の生産規模、範囲、情状に関する自己供述を重要参考として賠償額を確定することができる。

 「先使用及び一定の影響がある」ことの認定について、(2023)最高裁行申2567号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。商標権は地域的なものであり、権利範囲、保護内容、保護期間はすべてその地域的範囲によって制限される。商標が他の国や地域でのみ使用されている場合、商標法第32条に規定する「先使用及び一定の影響力がある」ことには該当しない。

 「権利侵害による収益が法定の最高賠償額を上回ることの証拠の認定及び考量要素」について、(2022)最高裁民終312号案件は、判決の要旨において以下のことを明確にした。権利侵害による収益が、不正競争防止法に規定された法定最高賠償額を明らかに超えることを立証するのに十分な証拠がある場合、裁判所は企業名の知名度、権利侵害者の主観的な悪意の程度、挙証妨害の有無、権利侵害行為の詳細、権利侵害の被害者の権利保護のための合理的な支出などの要素を総合的に考量し、法定以上の賠償額を確定すべきである。
(中国最高裁判所から翻訳)

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