カナダ連邦裁判所の最近の判決は、商標法第45条(登録官は使用者の証拠提出を請求することができる)に基づく不使用手続きの対象となる商標所有者に対し、宣誓供述書や法定申告書を準備する際の重要点を強調している。
第45条の手続において使用を立証するための閾値は低いかもしれないが、場当たり的なアプローチは、証拠に空白が生じ、登録された商品・サービスの抹消または補正のリスクにつながる可能性がある。
登録維持を勝ち取るためには、商標所有者は商標を登録した商品・サービスに関連してどのように使用したか、商品やサービスをいつ販売したか、誰に販売したかを含め、商標の使用を立証するための証拠を提出しなければならない。また、提出された証拠が、該当期間中に通常の業務過程で行われた販売を示すものであることを明らかにしなければならない。
概要
本件は、Red Maple Manufacturing Inc.(以下、Red Maple)が、商標法第45条に基づき登録商品を削除するよう商標登録の補正を命じられた商標異議委員会(Trademarks Opposition Board:TMOB)の決定を不服として控訴したもので、TMOBは、サービスに関しては登録を維持したが、該当期間中にカナダで商品に関して商標が使用したことをRed Mapleが立証できなかったと判断した。
問題の商標(下図)は、ハーブや栄養補助食品の経口単剤および配合剤、ならびにそれら商品の製造サービスに関連付けて登録された。
TMOBの決定
Red Mapleが商標登録を維持するために提出した証拠の一部は、製造、表示、包装に関するカナダ保健省からのライセンス(該当期間有効)と、製品が該当期間中にRed Mapleによって製造されたことを示す日付がラベル付けされたビタミンC容器の写真であった。しかし、法定申告書には、商品が「カナダで販売され輸出された」と記載されているだけで、そのような販売や輸出が実際に行われたことを示す証拠は含まれていなかった。さらに、法定申告書には、輸出または販売が該当期間中に行われたことが明確に記載されておらず、商品がどこで、いつ、誰に販売されたか、Red Mapleの通常の取引過程に関しても記載されていなかった。Red MapleのビタミンC容器の写真も、登録した商品による商標の使用を立証するには不十分であると判断された。TMOBによると、写真に写っている製品が販売または輸出されているのか、それとも単にRed Mapleが使用する包装の例を示すための写真なのかが不明であるとされた。
連邦裁判所の判決
裁判で、Red Mapleは商標法第56条(5)に基づき、宣誓供述書により新たな証拠を提出した。Whyte Nowak判事は、新証拠はTMOBに提出された証拠における不足分に対処するものであり、証拠能力があり、重要であると判断した。そのため、TMOBの決定は、正しさの証拠に基づいて見直され、法廷に提出された証拠に基づいて独自の判断を下すことになった。
Whyte Nowak判事は、新証拠は、該当期間中にカナダで登録商品と共に標章を使用したことを立証するRed Mapleの証拠能力を満たすと判断した。 新証拠は、Red Mapleがカナダで商品と共にどのように商標を使用したか、また商品がいつ、誰に販売されたかを示すものであり、単なる宣言だけではなく、使用を十分に証明するものであると判断された。新証拠には以下のものが含まれる:
* Red Mapleの販売プロセスに関する情報(製品を販売代理店に販売し、販売代理店は同じ製品を同じラベルとパッケージで、小売事業を通じて最終購入者に再販売したことを含む)
* Red Mapleとその販売代理店が、親会社による共通の支配と所有の下にあることを示す情報
* 図形標章を表示したビタミンC製品の写真
* カナダにおけるビタミンC製品の8ユニットがRed Mapleからその販売代理店へ、次に販売代理店から最終購入者へ販売したことを示す請求書
* 請求書は、該当期間を通じてRed Mapleがその販売代理店を通じてカナダの顧客に通常の取引過程で行った販売を示すものである旨の陳述書
もちろん、連邦裁判所に控訴する時に追加証拠を提出することは可能であるが、Red Mapleは、いつ、誰に、どのように使用されたかを含む最善の証拠を第一審でTMOBに提出して、控訴で証拠を提出するための追加的な時間と費用を回避するのが得策であったにちがいない。