ドイツの電機メーカー、シーメンスAG(SIEMENS、以下「シーメンス」)がNingbo Qishuai Electrical Appliance Co., Ltd.(以下「Qishuai」)ほか4社を相手取り、「西门子」(中国語で「シーメンス」)の商標権侵害と不正競争行為で起こした訴訟で、最高人民法院はQishuaiなど被告らを有罪とした。被告らは売上データの提出を拒否したが、最高人民法院は1億元(約1380万米ドル)の損害賠償を科した。
中国においてシーメンスは、洗濯機などを指定した「西门子」と「SIEMENS」の登録商標権を所有している。これらの商標は、長期にわたる広範なプロモーションと使用の結果、高い認知度と市場シェアを獲得している。これらの商標は中国国内において馳名商標(well-known trademark)として認められている。
Qishuaiは、侵害製品の生産における直接的な役割を偽装するために、「Shanghai Siemens Company」というペーパーカンパニーを設立した。Qishuaiの別の関連会社は、洗濯機を指定した中国商標登録(第9845563号)「SiMBMC」を取得した。シーメンスが提訴する以前から、「Shanghai Siemens Electrical Appliances Co., Ltd.」及び「SiMBMC/SIMBMC」と表示した模倣洗濯機は行政当局によって繰り返し押収されており、複数のメディアプラットフォームやフォーラムサイトが、Qishuaiの販売会社による模倣が疑われるシーメンス製品の販売について言及していた。
最高人民法院は判決の中で、Qishuaiら被告の行為は商標権侵害および不正行為であると結論づけ、以下の内容に基づいて1億元(約1380万米ドル)の損害賠償の支払いを命じた;
1. シーメンス社は、現行の不正競争防止法が施行される前に訴訟を起こしたが、証拠によれば、同法の施行後も侵害行為は継続しており、改正法の適用は適切である。
2. Qishuaiが洗濯機に「Shanghai Siemens Electrical Appliances Co., Ltd.」の名称を付したことは、シーメンス社の商標の使用に該当する。Qishuaiが使用した「西门子」はシーメンス社の商標「西门子」と同一であり、公衆に混同を引き起こす虞がある。従って、Qishuaiの行為は商標権侵害に当たる。
3. Qishuaiが「Shanghai Siemens Electrical Appliances Co., Ltd.」という会社名を製品包装や宣伝活動に使用することは、侵害製品がシーメンス社と関係がある、またはシーメンス社が生産していると公衆に容易に誤認させる虞がある。このような行為は、他人の著名な商号および登録商標の不正使用となり不正競争行為に該当する。
4. Qishuaiが売上データの提出を拒否したため、最高人民法院はメディアで報道された売上高を損害額の基とし、また、シーメンス社の商号の評判、被告らの悪意、侵害の規模および期間などの様々な要素を考慮し、法定上限を超える1億元(約1380万米ドル)の賠償額を決定した。
この事件では、侵害者は欺く目的でオフショアのペーパーカンパニーを設立したが、これは商標権侵害と不正競争行為に関する裁判所の判断には影響しなかった。賠償金の算定にあたり、最高人民法院は「証拠妨害制度(evidence obstruction system)」を適用し、被告らが売上データの提供を拒否したことで実質的なペナルティを科し、その結果として多額の賠償金となった。
本文は こちら (Case Study: Counterfeiter of SIEMENS Ordered to Pay 100 Million Yuan in Damages)