近年、登録商標の「3年不使用取消」案件数は年々増加している。3年不使用取消審判が請求された場合、国家知識産権局に実際に使用している証拠を提出する際、商標権者が中国大陸境内で生産製造のみを委託し、取消請求された商標を使用した製品を全て境外に輸出する状況がある。このような中国大陸で製品を販売しておらず、取消を請求された状況に対して、商標権者はどのように効果的に対応できるかについて、本稿では、筆者のこれまでの実務経験と関連事例を踏まえて、OEM生産、製品輸出における商標使用証拠の準備方法を紹介する。
1. OEM生産、製品輸出に関わるビジネス段階及び商標使用証拠の種類
3年不使用取消審判案件における商標の使用証拠は、通常、係争商標の使用及び指定商品での使用を証明できること、商標の使用者が商標権者自身のほかに、使用の被許諾者及び商標権者の意志に背かずに商標を使用するその他の者であること、使用証拠が要求される期限内にあることなどに限定される。
OEM生産の各段階に基づき、商標権者が通常以下の段階で形成された証拠を提供できる。
(1)製造委託段階:委託者と受託者が締結した業務委託契約書、注文書等
(2)輸出通関段階:インボイス、輸出申告書、パッキングリスト(Packing List)、船荷証券(Bill of Lading)、原産地証明書等
(3)客観的には製品が中国税関を出た後の販売、アフターサービス、マーケティング等の活動において、中国と関係がないものの、3年不使用取消審判案件では係争商標を使用した製品、製品の包装、製品ラベル等の写真を提供することで、OEM生産の客観的事実及び商標の実際の使用態様を裏付けられるため、積極的に提出することを提案する
2. OEM生産、製品輸出における商標使用証拠の準備
OEM生産、製品輸出で形成された使用証拠について、形式から見れば二つの特徴がある。一つ目は、大量の外国語資料があること。例えば、業務委託契約書、注文書、インボイス、パッキングリスト、船荷証券等は通常外国語で作成されたものである。二つ目は、取引の真実の履行を証明できる重要な証拠は自ら作成した証拠である。
(1)取引の真実性を証明するために、提出された証拠はできる限り各段階をカバーし、完全な証拠チェーンを形成してOEM生産、製品輸出の取引全過程を証明できることが望ましい。具体的には;
①業務委託契約書、注文書等
②インボイス、パッキングリスト等の中国製造メーカーが自ら作成した証拠
③輸出申告書、船荷証券、原産地証明書等の客観的証拠
(2)適量の使用証拠を提出する
(3)外国語証拠の中国語翻訳文を提出する
3. まとめ
世界の工場と呼ばれる中国は、世界中の多くの企業の生産・製造拠点である。多くのグローバル企業にとって、その製品が中国で販売されなくても、中国で商標を登録出願することや商標を維持するという切実なニーズがある。潜在的な3年不使用取消請求を有効に対応するために、商標権者が不使用取消審判案件の立証要件を事前に把握し、これらの要件をできる限りOEM生産事業活動中の取引書類に反映させ、事前の証拠収集と証拠保存に全力を尽くし、いざというときにこれらを利用して不使用取消審判案件で商標登録を維持し、自分の合法的権利を保護することを提案する。
(中国弁護士 姚 敏)