海外進出をする日本企業にとって模倣品・海賊版への対応は重要なことで、進出先で商標権等の知的財産権を取得する日本企業も増えてきている。
しかしながら、進出先で取得した知的財産権を侵害され、その国の法律に則って行政による処罰を申請したにもかかわらず、きちんと処罰をしてくれない等、適切な知的財産保護が行われなかった場合などで、どうしたらよいか分からず困惑している企業も少なくない。
外務省は、日本企業の海外知的財産保護を支援するため、世界の約200か所にあるほぼすべての在外公館(大使館、総領事館等)には、海外での模倣品・海賊版の被害相談窓口として、「知的財産担当官」が任命し、知的財産担当官連絡先リストを公開している。
海外での模倣品・海賊版の被害相談
知的財産担当官は、日本企業の方からの知的財産侵害等に関する相談を受け付けており、相談を受けた在外公館では、相手国政府等に働き掛けをする必要があるかどうか、働き掛けを行う場合、どの機関にどのような形で行うのが最も効果的か、等を検討し、また、働き掛けが時期尚早である場合、対応が可能な組織の紹介することもある。
知的財産保護セミナー等への支援
知的財産担当官は、日本企業からの個別案件に関する相談に対処する他、現地の日本商工会議所、日本貿易振興機構(JETRO)の現地事務所、日本企業の知的財産権研究グループ(IPG)等と普段から連絡を取り、必要な協力、サポートを行っている。また、普段から現地政府の関係当局との関係構築にも努めている。
近年では、日本企業の業界別団体等が現地の相手国政府の知的財産保護に携わる職員(税関、警察等)等を対象にした模倣品・海賊版判定セミナー等を開催し、日本製品の海賊版・模倣品の識別、対処法等につき研修する機会を提供するケースも増えており、このような活動を行う場合、現地の知財担当官に連絡すれば、セミナーへ大使館職員が出席する等で日本企業や現地の人と一緒に知的財産保護に努めるとしている。
知的財産担当官への相談例
* 全く無関係の先行出願を根拠に登録が拒否された
* 出願から登録(権利化)まで、又は異議手続に時間がかかる
* 権利者の差止め申立てが受理されない
* 差止め品が適切に処分されず、市場に環流している
* 民事訴訟において、侵害者が提出した証拠のみを考慮し、侵害を否定する判決を下された
* 刑事制裁の対象となる要件を満たすにもかかわらず、手続が行われない
(注)民間同士の問題について等、政府機関として対応できない場合もある。