2024年5月16日、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は第9回詐欺防止ネットワーク(Anti-Scam Network)会合をハイブリッド形式で開催した。会合は、知的財産詐欺との戦いにおける協力的な取り組みに新たな弾みをつけることを約束するものであり、特に偽の、あるいは誤解を招くような請求書や支払請求に関する詐欺から知的財産権者を守るための10年にわたる取組みを記念するものでもある。
会合には、EU加盟国、EFTA(欧州自由貿易連合)加盟国、欧州特許庁(EPO)、世界知的所有権機関(WIPO)、欧州刑事警察機構(Europol)、欧州司法機構(Eurojust)、EU加盟候補国の知的財産庁、複数のユーザー協会、オブザーバーとして参加した各国の法執行機関の代表者を含む、様々な関係者が一堂に会した。
詐欺師との闘いには協力が不可欠
このような広範な代表団は、詐欺的行為と闘うために協力的な活動の必要性を強調している。今回の会合の主なハイライトは、Europolによる講演で、このような詐欺の拡散に対する最新の取組みについて詳しい説明が行われた。また、EUIPOが開始した法的措置に関する最新情報も提供され、ユーザー協会や各国知財庁が主導する最新の協力やユーザー保護の取り組みについても議論が交わされた。
重要な焦点は、昨年秋に目撃された、各国知財庁のユーザーをターゲットにした電子メール詐欺の驚くべき急増であった。これらの電子メールには、知財庁の名称、略語(acronym)、ロゴ(これらはすべてEU商標として保護されている)を模倣し、副事務局長の署名を偽造した登録証が含まれていた。これに対し、EUIPOは、欧州インターネットドメイン登録機関(EurID)と協力し、これらの詐欺に悪用された一連のドメイン名を迅速に停止させるなど、断固とした措置をとっている。
会合の参加者はそれぞれの経験を共有し、誤解を招くインボイス詐欺の広範かつ国際的な特徴を司法当局に示すための協調的な行動の重要性について議論した。注目すべき協力として、ベネルクス知的財産庁(BOIP)とイタリア特許商標庁(UIBM)がEUIPOと手を組み、刑事告発を行った。これらの協議は、詐欺防止協力の効果を高め、このような詐欺的行為から知的財産制度のユーザーをよりよく保護するための広範な戦略の一環である。
詐欺師の手口の進化
何年にもわたり、詐欺師の手口は進化しており、その結果、公告、登録、ビジネスディレクトリへの登録など、不必要な商標および意匠サービスの代金を支払わせるよう企業をだます迷惑メールが発生している。このような詐欺は経済的負担をもたらすだけでなく、知的財産制度の完全性をも脅かしている。Europolの分析によると、知的財産権の出願人や所有者の約2%、つまり推定8,000人の被害者がこのような詐欺のターゲットにされている可能性があり、この詐欺行為による年間被害額は1,600万ユーロに達する可能性がある。
本文は こちら (New impetus in the fight against scams targeting IP right owners)