高級品の購入者は、製品そのものに加えて特定のブランドが持つステータスや高級感にも投資している。高級ブランドにとって、イメージの保護がとても重要であることは明らかであり、ブランドは知的財産を守るために多大な努力を払っている。しかし、それだけでなく、潜在的な購入者はブランドの行動規範を遵守することが求められる。
例えば、フェラーリのようなスピード、性能、排他性で有名なイタリアのスポーツカー・ブランドにとって評判は極めて重要だ。そのため、フェラーリの購入者は厳格な行動規範を守らなければならない。これ見よがしな行為、下品な行為、自己宣伝的な行為などは許されない。ポップ・アイコンとして代表的なジャスティン・ビーバーなど、常にスポットライトを浴びている有名人であっても例外ではない。
ジャスティン・ビーバーは、MTVのテレビ番組「Pimp My Ride」シリーズで、車両のカスタマイズを専門とする自動車修理店ウェストコースト・カスタムズにフェラーリをカスタマイズさせた。フェラーリの購入契約書には、購入者が車をカスタマイズすることを認める条項があるが、ウェストコースト・カスタムズはその修理店リストに含まれていない。さらに悪いことに、ジャスティン・ビーバーはフェラーリのミッドシップスポーツカーである458イタリアをチャリティーオークションに出品しようとした。
これらの行為により、ジャスティン・ビーバーはフェラーリのブラックリストに載ることになった。フェラーリのブラックリストには、フィフティー・セント、ニコラス・ケイジ、キム・カーダシアンなども入っている。フェラーリの立場は明確だ。フェラーリを所有することは単なる金銭的な取引にとどまらず、ライフスタイルやブランドの表現にも関わるからだ。フェラーリの所有者に対する厳選されたアプローチは、ブランドの理想である気品と分別を体現する者にフェラーリを所有する特権を与えるという、排他的イメージを維持するためのフェラーリの約束(commitment)が強調されている。
このことは、ブランドを独占的に維持するには、商標の保護だけでは不十分であることを示している。悪意や希釈化からブランドを守るためには、厳格な所有ルールを実施することが重要だ。