アフリカで類人猿に育てられた架空のヒーロー、ターザン(Tarzan)の名前は誰もが聞いたことがあるだろう。
英国のJT AGRO社が、医療補助食品や栄養補助食品の商標として「Tarzan」を申請した。ターザンの作者であるエドガー・ライス・バローズの会社(Edgar Rice Burroughs Inc)は、この出願に対して異議申立てを行った。しかし、そもそも架空のキャラクターである「Tarzan」は商標なのだろうか?
この異議申立ては、「Tarzan」が商標として使用されているという証拠が不十分であったとして、欧州連合知的財産庁(EUIPO)によって認められなかった。提示された証拠は、架空のキャラクターであるターザンに関連するものでしかなく、世界中で知られているものの、EUIPOは、それが商品やサービスに対する商標の使用にはあたらないと判断したのだ。バローズの会社は控訴し、控訴結果に大きな影響を与える可能性のある現在争われている事件の「アニマル・ファーム(Animal Farm)」事件を引き合いに出して、判決の延期を求めた。
「アニマル・ファーム」事件
この事件は、有名な本の題名や架空のキャラクターも有効な商標となり得るか、という興味深い問題を争っている。作者であるジョージ・オーウェルの未亡人ソニア・オーウェルは、ジョージ・オーウェルの文学的遺産を保護するために商標出願した。「アニマル・ファーム」を映画、玩具、娯楽、文化活動、教育サービスの商標として使用するためにソニア・オーウェルが申請したEU出願は一部拒絶された。EUIPOは、この商標は有名な芸術作品の題名であり、商品やサービスの出所を特定するものではない、つまり商標ではないと判断した。
ソニア・オーウェルはこの決定を不服とし、「アンネ・フランク」判決を引用して上訴した。この2つの商標の違いはどこにあるのだろうか。この件は現在、EUIPOの拡大審判部(Grand Board of Appeal)で審議されている。
現状
一般的に、書籍の題名はその内容を説明するものであるため識別力を欠くとされる。有名なテレビ番組「Jiskefet」の百科事典(Encyclopedie)に関するオランダの画期的な事件「Jiskefet」において、オランダ最高裁判所は、「Jiskefet Encyclopedie」というタイトルは、書籍の内容を説明するものに過ぎず、商品やサービスを区別するために使用することはできないとの判決を下した。つまり、このタイトルは商標ではないとされた。
「ジャングル・ブック」という有名なタイトルも商標として認められなかった。「ジャングル・ブック」は徐々にテーマ的な意味(thematic meaning)を獲得し、特定のタイプの物語やジャンルの代名詞として日常語に取り込まれたと判断された。一方で、「Le Journal d’Anne Frank(アンネの日記)」は商標として認められた。その理由は、商品やサービスの製造(提供)者が特定可能であり、タイトル自体の親しみやすさは登録可能性の障害にはならないというものであった。
では、どのような場合に書籍のタイトルが単に書籍の内容を説明するものという解釈を超えて、出所を特定する商標として認められるようになるのだろうか。
この問題は、「アニマル・ファーム」事件における拡大審判部によって最終的に解決されるのだろうか?いずれにせよ、これは興味深い事件なので、タイトルやキャラクターがどう言う場合に商標とみなされるかという、繰り返される問題に光が当てられることを期待したい。