ロシアにおける知的財産は、少しずつ前進している。2024年初頭、ロシア特許商標庁(Rospatent)は2ヶ月間で19,500件という記録的な数の商標出願を受理した。しかし、所有者がロシアで事業を行っておらず、その結果3年不使用で貴重な資産を失う可能性がある商標もある。
権利を維持するために、商標権者は、少なくとも商標を付したある程度の数量の商品を継続して提供するか、他人が同一の商標を出願する前に商標出願することを勧めたい。例えば、ロシアのR-Climate Ltd.は、「ERICSSON」商標を取消して、「ERICSSON」ラベルでヒーターや冷蔵庫を生産しようとしていた。
同様に、レストラン経営者のPinsky氏は、スターバックスの商標に対して不使用取消を請求した。「STARBUCKS」商標の物語は予想外の展開に満ちている。90年代、Starbucks Corporationはロシアで多くの商標を登録し、ロシアでコーヒーショップを開店する準備をしていた。ところが、ロシアのStarbucks Ltd.によって不使用を理由に商標が取消された。その後、Starbucks Ltd.は「STARBUCKS」商標を登録したが、これは明らかに不正競争行為であり、Starbucks Corporationは商標を取り戻すために莫大な費用を費やした。
Starbucks Corporationはロシアで100店舗以上をオープンし大成功を収めた。しかし、2022年に起きたウクライナ事件で一部の外国企業はロシアから撤退した。「STARBUCKS」商標は有効なままであったが、時が経つにつれ不使用の問題が漂うようになった。
そのような状況の中で、商標スクワッターたちが目を光らせていた。スクワッターたちは、「STAR BOX」、「STARFIX」、「STARKEX」、「STARLEX」、「STARTAX」、「STARMAX」など、スターバックスのサイレン・ロゴに似た文字や図形商標を多数出願した;
これらの商標のいくつかは、レストラン経営者のPinsky氏によって出願されたものである。商標出願はされたが、不使用請求に関する結果が出るまで保留となった。Pinsky氏は1年前にスターバックスの全資産を買収し、コーヒーショップの名称をスターズコーヒーに変更した。
不使用を理由とする商標の取消しは珍しいことではない。2022年、裁判所は不使用を理由とした262件の事件に判決を下している。取消手続きが複雑なスキームに含まれることもある。例えば、JVCは西インド諸島で登記された企業Saberta Venturesの犠牲になった。Saberta Venturesは「Million of Goods」というロシアの商社にライセンスを供与し、「Million of Goods」は香港のSmart International Distribution Ltd.から商品を購入していた。Smart International Distribution Ltd.は数カ国に施設を持ち、中国を含む様々な企業が所有する多くの商標の取り消しを行っているとされる。2024年初めから、アマゾン、ミシュラン、NEC、資生堂、ヴィクトリアズ・シークレット、シャオミが所有する商標に関して13件の不使用訴訟を裁判所に提起した。
Smart International Distribution Ltd.が、他人の商標を広範に収集して何をするのか疑問に思うかもしれないが、Smart International Distribution Ltd.は、自社で商品を製造するのではなく、他で商品を購入し、取り消された商標のラベルを付しロシア市場に投入する。これらの商標は登録されていなくても、多くは消費者にとって馴染み深いものであるから、そのような商標を付して無差別に商品化することで、必然的に消費者の誤解を招くことになる。