2024-09-20

インド:「商標の希釈化」は侵害の一種、カルカッタ高裁 - Chadha & Chadha IP

カルカッタ高等裁判所は、バージャー・ペインツ・インディア(原告:Berger Paints India Ltd) 対 JSW Paints Private Limited(被告)の事件において、商標の希釈化の問題を取り上げた。高裁は、欺瞞的類似性を立証できなかったとして、原告が求めた差止命令を認めなかった。

事件
 インドを拠点に塗料の製造・販売を行うバージャー・ペインツ・インディアは1923年にHadfields India Ltd.として設立され、現在は国際的に大きな存在感を示しており、塗料製品について1980年に登録した「SILK」商標を含む250以上の商標をインドで保有している。原告は、2019年12月に塗料業界の新参者である被告が「HALO SILK」商標で製品を販売していることを発見し、原告の登録商標 「SILK」を侵害するとして、被告に対して「HALO SILK」商標の使用差止を求めたものである。

カルカッタ高裁の判決 
 裁判所は商標の保護について検討し、商標は製造業者とその製品を結びつけ、消費者を騙すことを防ぐための「badge of origin(出所のしるし)」としての役割を果たすとの考えを示した。商標権侵害は、Durga Putt Sharma 対 Navaratna Pharmaceuticals LaboratoriesやF. Hoffman La Roche & Co. 対 Geoffrey Manner Co. (P) Ltdなどの判例で示されているように、混同を生じさせる虞は商標を比較することによって評価される。裁判所は、1999年商標法第29条第4項が希釈化に対応するものであり、これには混同を生じさせる虞を要件とせず、商標の評判、同一性または類似性、および不当な利益または損害の立証が必要であることを明らかにした。原告は欺瞞的類似性を主張し、被告は「SILK」を塗装仕上げの記述的用語として使用しているとしていたが、裁判所は両商標間に実際の類似性はないと判断し、業界における「SILK」という語の記述的性質に言及した。さらに裁判所は、「商標の希釈化は、多様で非類似の商品やサービスに関連して使用された場合に、著名な商標がその魅力を失うことから保護するものである」と述べ、原告の商標には権利不要求や制限事項が含まれていることが認められ、本件には該当しないとした。その結果、裁判所は、侵害や欺瞞的類似性は立証されなかったと結論づけ、原告の差止請求を棄却した。

 両商標の比較について、裁判所は「比較の目的は、原告の商標の本質的特徴が被告の使用する商標に見られるかどうかを判断することである。商標の本質的な特徴の特定は、基本的に事実の問題であり、その判断は取引の使用状況に関して、裁判所に提出された証拠に基づいて裁判所の判断に委ねられる」と述べている。したがって、標章を全体として考える場合、標章の本質的特徴を比較する必要がある。

結論
 本判決は、商標が法の下で保護されるためには識別力を示す必要があることを浮き彫りにしている。商標紛争、特に競争の激しい業界では、商標の識別性は、類似または一般的な用語を使用する可能性のある他の商標と差別化する上で極めて重要である。

 裁判所の判断は、商標が単に業界で使用される一般的な用語に似ているだけでは不十分であることを強調している。商標が保護の対象となるためには、他社が使用する類似の用語と混同されたり、希釈化されたりすることを防ぐレベルの独自性と識別性を有していなければならない。本判決は、特に特定の分野において記述的または慣習的とみなされる用語を扱う場合、このような紛争がどのように裁かれるかについて先例を示すものである。従って、本判決は、既存のブランドと新規参入者の両方にとって、商標が単にその商品やサービスを表す記述的なものではなく、十分に識別力があることを担保することの重要性について、貴重なガイダンスを提供するものである。

本文は こちら (Calcutta High Court: “The Dilution of Trademark, Is a Species of Infringement”)