事件の概要
施某徳電気欧州公司(以下、「施某徳欧州公司」という)は第9類遮断器、電気スイッチなど指定商品とする登録商標「(右上図)」「施耐徳」について、その出資先である施某徳電気(中国)有限公司(以下、「施某徳中国公司」という)にその使用を許諾した。施某徳中国公司は全国各地で複数の電気機器生産企業に出資し、かつその多くは「施耐徳」を商号としている。「(右上図) 」「施耐徳」などの一連の商標は電気業界や市場において比較的高い地名度を有している。施某徳中国公司は、蘇州施某徳電梯有限公司(以下、「蘇州施某徳公司という)が「施耐徳」「SCHNEiDER」の標章を過度に使用する行為は商標権侵害を構成し、商号「施耐徳」を含む企業名を登記し、かつ商標「(右上図)」の中核要素である「Schneider electric」に類似するドメインを使用する行為は不正競争を構成すると判断し、蘇州施某徳公司に対して権利侵害の停止、企業名の変更、損失の賠償、影響の除去を命じる判決を下すよう法院に求める訴訟を提起した。蘇州施某徳公司の弁論によると、被疑侵害標章の使用は国外の会社からライセンスを受けたものであり、係争商標の信用力を利用しようとする主観的過失は存在しない。一審法院は審理を経て、被疑侵害行為は商標権侵害および不正競争を構成すると判断し、蘇州施某徳公司に被疑侵害行為の即刻停止、企業名の変更手続きの実施、損失4,000万元および合理的支出15万元の賠償、声明の掲載による影響の除去を命じる判決を下した。江蘇省高級人民法院は二審において、蘇州施某徳公司は係争商標および係争商号の知名度を明らかに知っていたにもかかわらず、国外の会社とブランド使用契約を締結することにより係争商標の類似標章のライセンスを取得したが、その目的は係争商標の業務上の信用に便乗することにあり、一審判決の商標権侵害および不正競争行為に対する認定は正しいと判断した。係争商標の知名度および市場価値、蘇州施某徳公司の主観的悪意、権利侵害行為の期間および規模などの要素を総合的に考慮し、一審判決で確定した4,000万元の賠償金額に不当な点はない。江蘇省高級人民法院は二審判決において控訴を棄却し、原判決を維持した。
典型事例の意義
本件は「フリーライド」などの模倣による混同行為の厳格な処罰に関する典型事例である。権利侵害により法定賠償金額の上限を超えた利益を得たことを証明する十分な証拠がある状況下で、人民法院が立証責任を合理的に分配し、裁量的賠償方法を正しく適用して賠償金額を決定し、他人の業務上の信用に便乗した、市場において混同を生じさせる行為を厳しく取り締まり、権利侵害コストを著しく引き上げたことは、知的財産権保護を確実に強化するという明確な司法の方向性を十分に示すものである。
(事例出所:中華人民共和国最高人民法院)
本文は こちら (「施耐徳(シュナイダー)」模倣品混同紛争事件——巨額の利益を得た悪意ある権利侵害行為に対する賠償金額が確定)