2024-10-24

韓国法院、商標権侵害に関し初めての懲罰的損害賠償認定 - Kim & Chang

 このたび韓国で、故意に商標権を侵害した企業に対し商標法上の懲罰的損害賠償を認めた初の判決が出された。韓国特許法院は、乳幼児用食品の専門メーカーH社が、自社の商標登録が幼児用菓子メーカーI社の類似の先登録商標によって無効が確定したにも関わらず、故意に侵害行為を継続したことに対し、本来の損害額1億ウォンの2倍である2億ウォンの賠償責任があると判断した。これまで韓国のIP分野では2023年10月に特許権侵害に関し懲罰的損害賠償を認めた事例(50%増額)はあったが、商標権侵害に関する認定例は2020年10月の制度導入以来初めてである。

 当該商標権侵害訴訟事件で、一審のソウル中央地方法院は、H社の商標権侵害開始日から商標登録無効確定日までの損害額5億ウォンだけを損害賠償額と認定した。しかし、二審の特許法院は、一審で認めた損害賠償額5億ウォン以外に、その後の故意侵害期間の損害額1億ウォンも認め、懲罰的損害賠償制度により損害賠償額はその2倍である2億ウォンとなるべきであるとして、合計7億ウォンの損害賠償額を認めた。具体的に、特許法院では次のような事情を考慮して懲罰的損害賠償を認めた。

1. 被告の継続的なオンライン広告等の故意的侵害行為により、原告登録商標の識別力がかなりの部分損なわれた点
2. 被告は確定判決によって侵害製品の販売が原告登録商標に対する商標権侵害になるという点を明確に認識しながらも侵害行為に及んだ点
3. 故意侵害が認められる2年6ヶ月が決して短い期間とはいえない点
4. 被告は食品業界に占める地位と蓄積された資本力を基にオンライン広告検索語を容易に掌握して原告のビジネスチャンスを封鎖できた点
5. 被告の被害救済努力が十分であったとは認め難い点

 今回の判決はこれまでの商標権侵害判例に比べ多少大きな額の損害額が認められ、それと共に懲罰的損害賠償の適用も従前の1.5倍から2倍の額が認められたという点で意味がある。併せて、2024年8月から特許法上の懲罰的損害賠償の限度が3倍から5倍に引き上げられたという点で、韓国では知識財産権を強く保護しようという傾向が高まってきているといえる。今後IP分野において損害賠償請求訴訟はもちろん、懲罰的損害賠償制度の活用度もより一層高まっていくことが期待される。