韓国貿易委員会(KTC)は、税関と共に輸入·輸出等の水際取締を行う国家の主要機関であり、米国のITCを除いて日本、EUおよび中国等にはこのような機関はない。韓国において知的財産の効果的な保護を担う機関として定着している韓国貿易委員会について、今回、その任務としての「不公正貿易行為調査制度」を説明する。
不公正貿易行為調査制度
韓国貿易委員会は、不公正貿易行為による国内産業被害の調査、審議・判定、及び救済措置の建議等、『不公正貿易行為調査及び産業被害救済に関する法律』(以下、「不公正貿易調査法」という)の任務を行うのにおいて、9人の貿易委員会委員の審理と合議を通じて議決し、これを委員会独自の名義で対外的に発表する合議制行政機関である。韓国貿易委員会は、不公正貿易調査法に従って知的財産権侵害物品の輸出入行為等を調査し、判定を行うという意味において準司法的な機関といえる。
韓国貿易委員会は、委員長1人、それ以外の委員8人からなる計9人の委員で構成される。以下の組織図のように、韓国貿易委員会の所属として貿易調査室を置いており、貿易調査室の下に不公正貿易調査課が知的財産権侵害物品の輸出入行為(不公正貿易行為)の調査・判定及び救済措置に関する事項等の業務を行う。
不公正貿易行為の調査及び制裁に関連して、不公正貿易調査法で禁止している内容は、次のとおりである。
①大韓民国の法令や大韓民国が当事者である条約によって保護される特許権・実用新案権・デザイン権・商標権・著作権・著作隣接権・プログラム著作権・半導体集積回路の配置設計権や地理的表示若しくは営業秘密を侵害する物品等を海外から韓国に供給し又は韓国に輸入若しくは販売する行為、又は韓国から輸出若しくは輸出を目的として韓国国内で製造する行為
②原産地を偽って表示し若しくは原産地を誤認させる表示をした物品、原産地表示を損傷若しくは変更した物品、又は原産地表示をしていない原産地表示対象物品を輸出・輸入する行為
③品質等を偽って表示し若しくは誇張して表示した物品等を輸出又は輸入する行為
④輸出入契約の履行に関連して契約内容と顕著に異なる物品等の輸出入、又は紛争の発生等を通じて韓国の対外信用を損傷させて該当地域に対する輸出若しくは輸入に支障をきたす行為
韓国貿易委員会は、当事者の申請又は職権により不公正貿易行為を調査し、不公正貿易行為者に対して是正措置を命令するか課徴金を賦課する。
韓国貿易委員会の不公正貿易行為調査制度の主な特徴は、次のとおりである。
①知的財産権の保護範囲が特許権、商標権、デザイン権等のいわゆる産業財産権以外にも、著作権と半導体集積回路の配置設計権、営業秘密等にわたっており広範囲である。
②調査開始決定日から6月以内に不公正貿易行為の該非を判定しており、他機関(法院、特許審判院等)に比較して低コストで迅速な判定が可能である。
③回復できない被害等について、調査申請後に暫定措置制度を通じて、不公正貿易行為の中止等の迅速な救済措置を受けることができる。
④知的財産権侵害に関連し、韓国貿易委員会で侵害と判定された物品と同一の物品について第三者により輸出入がされる場合に、別途の調査・判定手続なしに既判定物品確認制度を通じて迅速な救済が可能である。
以上をまとめると、韓国貿易委員会は、知的財産権侵害を規制する他機関と比較して輸入・輸出・販売行為の中止等といった制裁措置の範囲と種類が多様であるとともに、強力な効力のある決定により不公正貿易行為に対する効果的な救済が可能である。
韓国貿易委員会による調査は、輸入・輸出・販売行為の中止等といった制裁措置の範囲及び種類が多様であり、短期間に強力な効力のある決定がなされる傾向がある。このため、韓国において、権利者の立場では不公正貿易行為に対する効果的な救済が可能である一方、被申請人の立場では迅速かつ広範囲な対応が必要とされる。