「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」のようなアニメーション映画は、その卓越した職人技によって、世界的に認知され広く評価されるようになった。「千と千尋の神隠し」は第75回アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞し、スタジオジブリの最新作で第96回アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞した「君たちはどう生きるか」は、魅力的なストーリーと映像が見事に融合している。特に、冒頭で主人公が火事のなかを走るシーンは驚くべき芸術性だ。ディズニーと同様、スタジオジブリは海外にもショップやグッズを展開している。EUでもネットフリックスで配信されており、かなり有名なブランドだと言っていいだろう。
その名声を守るため、スタジオジブリはバッグや衣類などを指定してEUに図形商標を出願した。スタジオジブリにとって不運だったのは、バッグや衣類で「GHIBLI」として知られる古い商標に基づく異議申立てに遭ったことだ。
EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、両商標は類似しており、商品も同一であることから混同のおそれがあると判断し、バッグと衣類の商標出願の登録を拒絶した。
この決定は理にかなっているように思われるが、「Messi(メッシ)」商標に対して異議申立てをした「Massi(マッシ)」の事件で欧州司法裁判所(ECJ)が下した判決から考えると疑問が残る。この事件は、有名なサッカー選手であるメッシが衣類などを指定して商標を出願したものだが、アパレルブランドのマッシは、「Messi」商標が混同を生じさせるおそれがあると判断し、商標が類似しているとして異議申立てを行い、「Messi」商標の登録は拒絶された。しかし、最終的にECJは「super reputation(超一流)」という考え方を認めた。つまり、「Messi」ブランドを見れば、誰もが自動的にサッカー選手を連想するということだ。この連想は、マッシのような類似の衣料品ブランドとの混同のリスクを排除すると裁判所は判断した。この判決には一定の論理がある。しかし、どの時点で個人や企業が「超一流の評判」を持っていると言えるのだろうか?
スタジオジブリに対する異議申立で、この議論は取り上げられなかったが、スタジオジブリの図形商標を見た人は、その世界的な名声、商標に「Studio」の文字が追加されていること、ロゴにトトロ(スタジオジブリの有名なキャラクターの一つ)の図形が使われていることから、自動的にスタジオジブリを思い浮かべると主張することは可能である。おそらく、不服申立ての根拠となるのではないだろうか?
本文は こちら (Studio Ghibli is often called the Japanese version of Disney)