2024-12-06

中国:拒絶査定不服審判における商標の実際の使用状況に対する考察 - Linda Liu Group

拒絶査定不服審判事件において、商標の使用状況は誤認条項の拒絶理由を克服するために有用であるのか。

第17545726号商標「腎源春氷糖蜜液」に係る拒絶査定不服審判事件において、商標標識の「氷糖」と「蜜液」は指定商品の「生薬」などに氷砂糖の成分が含まれ、蜜液の生地があると需要者に誤認させやすいとし、国家知識産権局と二審裁判所はいずれも第10条第1項第7号に違反すると認定した。しかし、商標出願人は係争商標を使用した製品の効能試験報告書、食品安全に関する毒性試験報告書などの証拠資料を提出し、関連製品の成分に氷砂糖と蜂蜜が含まれていることを証明した。最終的に、最高裁判所は係争商標標識そのものだけでは、出願商標を指定商品に使用したことが需要者に商品の原材料や成分などの特徴について誤認を生じさせることに至らず、欺瞞性を帯びる行為に当たると認定し難いとして、係争商標の登録を認めた。

もう一つ似ている事件としては、第44050872号商標「紓糖膳底」に係る審決取消訴訟事件vがある。この件において、国家知識産権局と一審裁判所は、「紓糖」は糖質の吸収を緩やかにし、血糖値をコントロールする意味があり、商標全体が指定商品の効能及び用途などの特徴について需要者に誤認させる恐れがあると判断した。しかし、二審裁判所は出願人が提出した係争商標を使用した粉ミルク製品のグリセミック・インデックス(GI)の測定及び評価報告書に基づき、かかる製品は確かに血糖値をよくコントロールすることができると認めた。係争商標を粉ミルクなどの商品に使用することは欺瞞性を帯びないとし、登録を認めるべきであると言い渡した。

上記2つの事件の発効判決は「竹塩」に係る無効審判事件と同じ考え方を示している。すなわち、商標出願人または商標権者は、標識が相応の「欺瞞性」の結果を引き起こさないことを立証し、ロジック上で違法性阻却事由が成立できれば、「欺瞞性」の結果に至らないと認定することができる。当事者は係争商標を使用した商品の特徴が商標にある記述的な語と一致することを立証すれば、当該商標標識は「欺瞞性」を帯びないと推定できる。従って、商標標識が欺瞞性を帯びるか否かを判断する際に、商標の実際の使用状況は非常に重要な役割を果たしている。

しかし、第22206123号商標「鋅烯望」に係る拒絶査定不服審判事件では、裁判所は正反対な判断基準を採用した。当該事件において、係争商標の指定商品は塗料(ペンキ)などの商品である。商標出願人はその製品に金属の亜鉛、アルケン類化合物が含まれていることを証明するために、製品検査報告書を提出したが、二審裁判所は当該検査報告書がその製品の一部分しかに関わっていないため、指定商品の全てがその成分を含めていることを証明できないと判断した。そして、インボイス及びネット報道などの証拠も、係争商標の使用が商標権者と唯一の対応関係を形成し、商品の品質などの特徴について需要者に誤認させないことを証明するには不十分であるとして、最終的に係争商標の登録出願を拒絶した。

この判決の論理は、登録商標が商品の原材料や成分などの特徴を保証する機能を担うべきではないし、担えないというものである。当事者が一時製造した製品に関連成分が含まれていたとしても、その後の製造行為の一貫性を予測できない。従って、商標の実際の使用状況が欺瞞性の認定にあまり影響を与えないと思われる。

最近の拒絶査定不服審判事件において、このような観点を採用する不服審判の審決はますます増えていることに気づいた。例えば、第71118858号商標「AGE PERFECT COLLAGENE ROYAL」に係る拒絶査定不服審判事件(審決期日:2024年03月12日)、第67449566号商標「豚角PORK RICE及図」に係る拒絶査定不服審判事件(審決期日:2023年12月08日)、第70408161号商標「skin79」に係る拒絶査定不服審判事件(審決期日:2024年3月12日)等。審決書には、次のような旨が明確に記載されている。「『商標法』第10条第1項第7号に規定する不登録及び使用禁止の状況は法律禁止条項であり、需要者に誤認を生じさせやすい関連標識が使用を経て相応の知名度を有するか否かにかかわらず、その登録と使用を一切許可することはできない」。つまり、当該条項は絶対的な不登録事由として、当事者が標識の実際の使用によって登録性を得ることはできない。このやり方は、誤認条項に違反する商標標識を第10条第1項の他の状況に違反する商標標識と同等に扱っている。これは悪影響を及ぼす商標標識(例えば、暴力団)がどのように使用されても登録できないのと同じである。

このように、拒絶査定不服審判の司法実務において、商標の実際の使用状況が考慮されるか否かについて意見が分かれている。最近の審決から見ると、国家知識産権局はそれを考慮しない傾向が少し強い。

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