2025-01-06

台湾:商標ポートフォリオ―商標権者は加速審査制度を最大限活用すべし - Lee and Li

一、前言
 台湾では、商標登録出願は出願から登録まで約6~8ヶ月かかる。特に台湾における商標登録出願件数は年々増加しており、限られた人員リソースを前提として、大量の案件の審査期間を短縮することには限界がある。さらに、出願人は、商品やサービスを販売するためにタイトなスケジュールで業務を行うことがあるため、商標やブランドの保護を即時に取得することが困難な場合がある。産業の発展と国民の商標出願に対するニーズに対応するため、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、商標主務官庁が加速審査を実施するための基礎として、2023年5月24日に改正公布された商標法第19条第8項に、「商標の加速審査」に関する新たな規定を導入した。

 加速審査制度は、2024年5月1日に正式に開始され、2024年6月13日に智慧局より最初の登録査定書が発行された。当該案件では、2024年6月4日に加速審査が申請し、2024年7月16日に登録査定がなされた。以上のことから、権利者は加速審査という手段を最大限に活用して早急に商標ポートフォリオを展開すべきである。以下では、加速審査制度の申請要件と手続について紹介する。

二、申請要件
 政府は最近、商標登録出願の加速審査制度による審査効率の向上を国民に奨励しているが、法律で規定された要件を満たす商標登録出願のみが加速審査を申請することができる。

 商標法第19条第8項では、「商標登録出願について、出願人が即時に権利を取得する必要がある場合、事実及び理由を明記し、加速審査手数料を納付後、商標主務官庁は加速審査を実施することができる。ただし、商標主務官庁がその登録出願に対して補正又は拒絶査定理由を通知した場合はこれを適用しない。」と規定されている。したがって、加速審査は、(1)出願人の即時権利取得の必要性、(2)事実と理由の明記、(3)審査手数料の納付、の要件を満たさなければならない。このうち、最も重要な要件は、即時権利取得の必要性である。

 また、商標法施行細則第19条の2第1項の規定において、即時権利取得の必要性には、(1)商標登録出願の指定商品・役務の全てについて、出願商標を実際に使用し、又は使用の準備を相当程度進めていること、(2)商標登録出願の指定商品・役務の一部について、出願商標を実際に使用し、又は使用の準備を相当程度進めており、かつ、商業上権利取得の必要性及び緊急性があること、の2種類の事情がある。また、同施行細則第19条の2第2項の規定によると、権利取得の必要性及び緊急性とは、次のいずれかに該当するものをいう。(1)第三者が出願人の同意を得ないで当該出願商標を使用し、又は使用の準備を相当程度進めている場合、(2)当該出願商標の使用により、第三者から商標権侵害の警告を受けた場合、(3)当該出願商標について、第三者から使用許諾を求められた場合、(4)当該出願商標を付した商品・役務の発売が計画されており、提携企業との間で販売又は代理販売などに関する契約を締結した場合、(5)当該出願商標の展示会への出展を計画しており、かつ出展社と関連契約を締結した場合、(6)その他、商業上権利取得の必要性及び緊急性があると認めるに足る場合。

三、申請手続
 出願人が加速審査を申請するとき、上記要件を満たすことに加え、商標登録出願をしてから、智慧局が最初の審査通知を発行するまでの期間内に、出願番号ごとに主張したい類型に応じた事実証拠を添付し、それぞれ加速審査を申請する必要がある。同局は出願人が加速審査手数料を納付した後申請を受理する。

 証明書類に不備がある場合、智慧局は申請を受理してから10営業日以内(書面(紙)出願は約15営業日以内)に補正を行うよう出願人に通知する。加速審査の要件を満たする出願については、原則として受理後2ヶ月以内に商標主務官庁から最初の審査通知書(例えば、登録査定又は手続補正指令、拒絶理由先行通知)を受け取ることができる。出願人は補正又は意見申立てを提出した後、当該出願についてその他補正すべき事項がない場合、受理後15営業日以内に査定が下される。ただし、同局は、以下のいずれかに該当する場合、加速審査の要件を満たしていても短期間で査定できない可能性があると述べている。
(一)商標を使用する指定商品又は役務の名称の意味が広範又は不明確であり、実際に使用し、又は使用の準備が相当程度進んでいる商品又は役務と対照できない場合。
(二)出願商標の態様が、立体、色、匂い、音又は連続図形などの非伝統的商標であり、商標の識別性を証明するための資料を提出する必要がある場合。
(三)商標に関する紛争が生じた場合、商標登録を認めるか否かの判断は、紛争案件の処分結果に基づいて行われるべきである場合。

四、結論
 商標の加速審査制度は、商標権取得の必要性・緊急性がある場合に、商標出願人が加速審査制度を利用することにより、半年以上待つことなく、即時に商標権を取得することができる。したがって、商標の加速審査制度は、必要性、緊急性の高い出願を優先的に審査し、出願ニーズを満たすための審査の効率化を図ることができる。また、将来的には、商標出願のニーズという観点から、各商標出願人は、ブランドの立ち上げや販売スケジュールの緊急性に応じて、この制度を活用することで、早期権利化を実現し、より短期間で商標権の保護を受けることができると期待できる。

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