2025-01-31

英国、EU:SkyKickの判決は英国やEUにおける商標登録の新たな制約となるのか? - Novagraaf

ブランドオーナーが過度に広範な商品・サービスを指定して商標を出願したらどうなるのか?欧州の商標権者にも影響を与えそうな英国の判決をAaron Woodが解説する。

商標登録で指定する商品・サービスの範囲はどの程度まで許容されるのか。出願人の業務と関係のある商品・サービスだけでなく、出願人の業務と関係のない商品・サービスについても登録することは許されるのだろうか?出願人の商業的利益よりも広い範囲で商標を登録した場合、その広い範囲の登録を自分の商業的利益の範囲外で権利行使することは許されるのだろうか。これらの慣行に違反した場合、「不誠実」な行為とみなされるのだろうか。 

これらは、2024年11月のSkyKick UK Ltd vs Sky Ltd事件における英国最高裁が下した商標に関する核心的な問題で、ほぼ12ヶ月間待ち望まれていた判決であったが、英国だけでなく欧州全体の商標実務に影響を与える可能性が高いものと思われる。

長く待ち望まれていた英国裁判所の判決
この判決は英国の裁判所によるものだが、最高裁判所は、英国の裁判所がEU商標案件を判断する管轄権を有していた時代の権限を用いて判決を下したもので、裁判所は英国の法律だけでなく、EU商標法の適用についても判断する必要がった。

この裁判は、ブロードバンドや携帯電話などの通信サービスも提供する大手テレビ・エンターテインメント企業のSky Ltd(以下、「Sky」)が、インターネット・サービス・プロバイダーのSkyKick UK Ltd(以下、「SkyKick」)に対して起こした商標権侵害事件として始まった。Skyはその数年前に、ありとあらゆる商品とサービスをカバーする重要な商標ポートフォリオを構築していた。その中には、「ムチ」のような商業的合理性のないものや、「コンピューターソフトウェア」のような、あらゆるコンピューターソフトウェアをカバーする用語も含まれていた。 

SkyKickは、Skyの商標を無効にすることで自社を守ろうとした。SkyKickは、Skyが自社の商標を必要以上に広範に保護し、Skyとの商業的競合がない第三者に対してもSkyを付した標識を使用するのを阻止するために、英国でこれらの商標登録を乱用したのは不誠実な行為であると主張した。  

この訴訟は、最初の審理中に欧州連合司法裁判所(CJEU)に付託された。裁判が英国に戻されると、裁判官は、Skyの商標は部分的に(すべてではないが)悪意があるものと結論づけた。一部の用語に対して完全に悪意があるとしただけでなく、他の用語も部分的に悪意があり、より限定的な指定に制限されるべきであると判じた。

商標登録を「悪意」とするものは何か?
この判断は英国最高裁によって支持され、悪意はEU法において特定の意味を持つ用語であることが強調された(英国法においてもその意味は共有されている)。悪意とは、特定の第三者に対する不誠実な心理状態や意図をもって商標を登録することだけでなく、商標の機能以外の目的で独占権を獲得することも意味している。

裁判所は続けて、商標の登録が悪意をもって行われたかどうかを判断する際には、次の点が示唆的な要素となり得るとした。
* 指定商品・サービスの全体的な広さ、すなわち、出願人の規模の企業にとって合理的な範囲をはるかに超える指定リストに対して保護が求められていないか
* 適切な小分類ではなく、広範または一般的な用語(「コンピュータ・ソフトウェア」など)を指定していないか
* 権利者の業務範囲を広く超えて指定商品・サービスを指定していないか

最高裁は、「SkyKick」商標の英国判決において、英国高等法院の裁判官が悪意を認定する権限を有していたことを示すとともに、裁判官は、部分的に悪意が認められた条項について、裁判官がそれを受け入れ可能な内容に修正する権限も有していたことを強調した。

英国とEUのブランドオーナーにとっての重要なポイント
今回の判決は、多国籍企業から中小企業に至るまで、広く影響を与え頻繁に引用される可能性が高い。その影響がすべて明らかになるには時間がかかるかもしれないが、明らかにブランドオーナーが注意する必要がある点を以下に示す;
* ブランドオーナーが自社製品に対して「型通りの」指定商品・サービスリストに基づいて商標を使用している場合であっても、攻撃の対象となる可能性がある
* 商標に関する行き過ぎた権利行使が悪意とみなされることを回避するためには、個別のアプローチ(または少なくとも係争案件を慎重に選別・管理する)が必要となる
* 真の安全性を確保するためには、明確に表現されたビジネス上の計画を登録時に明示する必要があるかもしれない

本文は こちら (Will SkyKick set new limits for trademark registrations in the UK and EU?)