2025-03-05

EUで数字を商標として登録できるか? - Novagraaf

シャネルの商標「N°5」をめぐる最近の争いは、EUにおいて数字を商標として登録できるかどうかという問題を提起している数字の商標や図形商標の権利に関して。Clarisse Merdyが解説する。

本件は、有名なファッションブランドであるシャネルと、スロバキアの企業Simb DOOの対立を巡るものです。シャネルは、フランスで登録した商標「N°5」(登録番号1293767)と「5」(登録番号98755754)の権利者として、Simb DOOがEUに出願した図形商標(下図:出願番号18872562)に対して異議を申立てた。

 

シャネルは、自社の商標「N°5」が持つ識別力と世界的な知名度を主張して、Simb DOOの図形商標の登録を拒絶するよう求めた。また、「5」という数字が支配的な要素であることから、両商標の類似性は明白であり、いずれもニース国際分類(第3類)に属する商品を対象としているため、混同を生じる虞が高いと主張した。一方、Simb DOOは、自社の商標の識別性と独創性を強調し、両商標間に混同の余地はないと反論した。

このため、欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、混同の虞を検討する必要があった。具体的には、Simb DOOの出願商標がシャネルの商標と十分に区別できるか、また、シャネルの商標の知名度が拡大された保護を正当化するかを判断しなければならない。 

数字商標:本件におけるEUIPOの見解
EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、両商標が第3類の指定商品として類似性があることを認めたものの、商標自体の類似性については認めず、次のように指摘した。
「商標間には顕著な違いがあり、それは記憶に残るものである。」

また、異議申立人が提出した証拠に基づき、EUIPOは以下のようにも判断した。
「広告資料がいつ、どこで、どのように配布されたのかについて証拠がなく、特に、それらが関連する地域の消費者に届いたのか、またはマーケティングキャンペーンが地理的地域に限定されていたのかが不明である。[…] 提出された証拠は、先行商標の本来的な識別力の通常の程度を超える識別力を立証するには不十分である。」として、次のように結論付けた。「関連地域の公衆の視点から見ると、先行商標が問題とする商品のいずれについても意味を持たない。したがって、その識別力は通常程度のものと見なされるべきである。」

識別力の立証
この決定は、商標の識別力の評価に関する厳格かつ厳密な論理に基づいている。
EUIPOは判例法を確認し、「N°5」という商標は1921年以来高級香水を示すものとして広く知られており、消費者の心に普遍的に存在しているように見えるかもしれない。しかし、その評判を証明することは必要である。「異議部は、先行商標の識別力の向上について私的に知り得た知識ではなく、提出された証拠のみに基づいて評価を行わなければならない。」

この評価の重要性は、混同のリスクが、先行商標の識別力が高いほどより大きくなるという点にある(Sabèl判決)。その結果、識別力が高いと認められた商標は、より広範な法的保護を享受する(Canon判決)。

この特権は生まれながらに備わっているものではなく、企業は指定商品・サービスに関する具体的かつ十分な証拠を提出しなければならないことは、理解されるだろう。
*商標の使用証拠:これには消費者の間での商標の使用期間、使用の質、地理的範囲を示す文書が含まれる場合がある
*市場調査:消費者の間でのブランド認知を強調する
*販売実績:ブランドの商業的成功を示す
*広告・宣伝:認知度の維持および向上のためのマーケティング投資や広告キャンペーンを示す
*受賞歴・表彰:専門家や一般からの評価を証明する
メディア露出:ブランドの認知度を示す新聞記事、メディア露出、出版物での言及などが含まれる場合がある

識別力の審査
識別力は、混同のおそれや評判への損害を評価する際など、さまざまな状況で重要な要素となる。しかし、それは商標間の類似性を厳格に分析する際の妨げとなるべきではなく、また、具体的な証拠によって立証される場合に限り、高い識別力が認められる。

したがって、企業は高い識別力を有する、あるいは著名な商標として法的保護を受けるために、常に十分かつ説得力のある証拠を提出しなければならない。同時に、「長年の使用実績(longevity)」の証明と「識別力(distinctiveness)」の証明を混同しないよう注意すべきである。…残念ながら、今回のシャネルの事例では、それが適切に行われなかったようだ。

この高級ブランドが、数字の商標の識別力を主張して控訴する可能性も考えられる。
続報があるかも!

本文は こちら (Can you register a number as a trademark in the EU?)