2025-04-01

イタリア料理の商標あれこれ100選「第18話:肉製品」

 こんにちは、鈴木三平です。
 第18話は「クロケッタ」「パンチェッタ」「プロッシュット」「サルシッチャ」等の肉製品。「カルパッチョ」もここに入れました。なかなか興味深い事例が並びます。

Ⅰ.CARPACCIO
1.辞書情報
carpaccio[カルパッチョ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷37ページ)
男 カルパッチョ(牛肉の薄切りにマヨネーズ,オリーブオイル,こしょう,レモン汁,生野菜,チーズなどを添える前菜. ~ alla Cipriani マヨネーズソースをかけたカルパッチョ.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 148ページ
「ヴェネツィアの著名なレストランバー「ハリーズ・バー」の初代オーナー、ジュゼッペ・チブリアーニ氏」が、「1950年、常連客の伯爵夫人のために作った薄切り生肉の牛フィレ料理に、即興で
「生フィレ肉のカルパッチョ風」と名づけたのです。」

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「カルパッチョ」の検索結果

 

(3)「【公式】dancyu (ダンチュウ)」のウェブサイト
 見出し「軽やかな肉冷菜”牛たたきのカルパッチョ” | 素材の風味を生かす塩使いの基本レシピ」
 「カルパッチョというと白身魚を使ったものを思い浮かべますが、実は牛肉を使ったものが元祖。」との記載がある。
https://dancyu.jp/recipe/2023_00007583.html
(2025年3月1日閲覧)

4.コメント
 商標(1)が、審査官の指示によって、指定商品を「カルパッチョ」まわりのものに限定して登録されているらしきこと、(2)は(1)の審査中に出願されたが、「類似あり」ではなく、「商標として機能しない」という理由で登録を拒絶されていることからも、前菜類のカルパッチョは自由使用といえる。
 なお、ここでカルパッチョを魚介類ではなく肉製品に入れたのは、上にもあるとおり、イタリアでは少なくとも、もともとは生魚は使っていなかったためである。


Ⅱ.CROCCHETTA
1.辞書情報
 crocchetta[クロッケッタ](上記『イタリア料理用語辞典』55ページ)
女 コロッケ.
注:女=女性名詞

2.商標の状況

不服2013-13388(登録拒絶査定を維持した審決より抜粋)
 「クロケッタ」の文字は、「コロッケ」の意味を有するイタリア語「crocchetta」及びスペイン語「croqueta」の表音と認められ、別掲に示すとおり、本願の指定役務を提供するに当たり、「コロッケ」を意味する語として、一般に広く用いられているものである。
 そうとすれば、本願商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、これが「コロッケ」を表したものとして、容易に認識するというのが相当であるから、本願商標は、単にその提供する役務の対象物を普通に用いられる方法で表示してなるにすぎないものというべきである。

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「クロケッタ」の検索結果

 期間は一律的に2023年としているが、2024年になってから1件あった。

4.コメント
 外食サービスに関する出願だが、いわば、「コロッケレストランに『クロケッタ』と言ったところで、『コロッケを中心に提供する外食店』という業態で認識されるだけ、商標として機能しない。」という結論である。そんな専門的なレストランが実在するかどうかは別として、需要者にはそう理解されるという判断である。


Ⅲ.PANCETTA
1.辞書情報
pancetta[パンチェッタ](上記『イタリア料理用語辞典』123ページ)
女 豚のばら肉;豚ばら肉の乾燥塩漬け,生のベーコン;(ローマ地方)牛のともばら,フランケン;子牛の下ばら肉.
注:女=女性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「パンチェッタ」の検索結果

 

4.コメント
 商標(2)が(1)と類似ではなく、「商標として機能しない」といった理由で登録を拒絶されている。一般消費者までとは言わないまでも、レストラン等の需要者には、「パンチェッタはいまやバラ肉のベーコン的なもの)」ぐらいの認識はあるといってよさそうだ。


Ⅳ.PROSCIUTTO
1.辞書情報
prosciutto [プロッシュット](上記『イタリア料理用語辞典』138ページ)
②男 豚のもも肉;生ハム.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

<不服2002-016842、登録拒絶審決から抜粋>
 肉製品を取り扱う業界においては、「イタリア、パルマ地方産の(塩漬けの)ハム」について、「パルマハム」の製品名で呼ばれ、イタリア語では「Parma-Prosciutto」(食肉通信社発行、食肉用語事典「新訂版」)と表され、商品の産地、品質を表示するものとして、普通に使用している実状が見受けられるところである。
 してみると、上記意味合い及び取引の実情からして、「プロッシュット ディ パルマ」の文字からなる本願商標をその指定商品「ハム」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「イタリア、パルマ地方産の(塩漬け)ハム」として容易に理解するというのが相当であって、商品の産地、品質を表示したものとして理解するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「プロシュート OR プロシュット」の検索結果
 今世紀に入ってからは、多くの年で登場するようになった。

 

4.コメント
 商標(1)(2)とも、パルマ生ハム協同組合ようなところの出願で、(1)は団体商標で登録拒絶、(2)は地域団体商標で登録であった。(1)(2)とも、「パルマ産の生ハム」程度の意味合いであることは認められているようだ。
 まず、(1)については仮名書きであることが災いしたかもしれないが、「使用によって自他商品識別別機能(商標としての機能)」を獲得したという主張が認められなかったものである。
 (2)については、(1)の出願より後に設けられた(2006年4月1日施行)地域団体商標の出願である。地域団体商標については、所定の組合等の出願であれば、一般の商標や団体商標の出願についてよりも、知名度(周知性)が低めでも登録を認めるものといえる。知名度の低さについては、通常の商標や団体商標は全国的、地域団商標体は近県程度と言われているが、「パルマ生ハム」について、日本国内で地域によって知名度が大きく異なるとは考え難い。上記グラフでも分かるが、2006年以降は、少なくとも「まあまあそこそこ知られているレベル」に達してきていると言えないこともなさそうなので、(1)とは違う結論となったということだと思う。(2)は数少ない、外国の組合から出願された地域団体商標の登録例である。ワインのときにも述べたが、「産地表示(+商品の普通名称)」が、組合を主体とする商品出所表示として認識されているものである。


Ⅴ.SALCICCIA,SALSICCIA
1.辞書情報
salciccia [サルチッチャ]《複 -ce》(150)
女 腸詰め,ソーセージ.= salsiccia
salsiccia [サルシッチャ]《複 -ce》(151)
女 腸詰め,ソーセージ.
注:女=女性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「サルシッチャ」の検索結果(サルシーチャは0)

 

4.コメント
 商標(1)が広範囲の商品について登録されてしまっていて、「SALS(C)ICCIA」には、「商標としての機能」があるようにも見えるが、その後の「Salsiccia」を一部に含む(2)の商標が、指定商品を出願時からソーセージ類にしぼり、早期審査を求めて登録に持ち込んでいるところをみると、審査官も審査時点では、ソーセージ類について「Salsiccia」は商標として機能しないと評価したから、(1)と類似と判断しなかったといえる。


<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。

* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回18話めで、累計56件となった。次回は、チーズやオイルについて扱う予定。