イラク商標庁(TMO)は、商品・サービス分類の見直しを行い、2025年1月よりニース国際分類第11版を採用した。これまで使用されていた国内独自のサブクラス分類からの転換を意味し、イラクの商品・サービス分類が国際基準に準拠することになる。
背景:サブクラスから国際基準へ
TMOは、歴史的に商品・サービスをサブクラスを使用した国内分類システムの下で運営されてきた。ニース国際分類第11版への移行は、知的財産の枠組みをグローバルなベストプラクティスに合わせるというイラクのコミットメントを反映したものだ。
しかしながら、ニース国際分類第11版への移行は、イラクの商標登録制度におけるいくつかの手続き上および定義上の変更を引き起こし、出願から登録後の措置まで、商標ライフサイクルの様々な段階に影響を及ぼすことになる。
出願前手続き
TMOは、商標の登録可能性を確認するために出願前のオフィシャル・サーチを義務付けている。オフィシャル・サーチは、商標の形式的および実体的な審査として公式に扱われ、以後の手続きの方向性を定めるものとなる。オフィシャル・サーチの結果は、通常「YES(可)」または「NO(不可)」の二択形式で通知され、詳細な報告書は提供されないことが一般的だ。出願人はオフィシャル・サーチ後30日以内に出願する必要があり、これを過ぎると出願は放棄されたものとみなされる。
商品・サービス分類
核となる変更点は、商品・サービスの分類に関してで、すべての新規商標出願はニース国際分類第11版に従って出願しなければならない。また、係属中の出願人には2つの選択肢が与えられる。第一に、再分類延期:旧サブクラスの下で登録を進めることができ、異議申立期間終了後に第11版への再分類が義務付けられ、その再分類された商品・サービスをもって登録証が発行される。この選択は、商品・サービス数が多い商標出願に推奨される。第二に、即時再分類:出願人は次の商標出願手続きで、第11版の商品・サービスを選択して再分類できる。TMOは、必要に応じて選択された品目を承認または調整する裁量権を有する。
商標出願人への影響
ニース国際分類第11版への移行は、出願人にとって重要な意味を持つもので、第11版の複雑な分類体系を正確に理解し、自身の商品・サービスを正しく分類する必要がある。一方、既存の商標権者は登録内容を第11版に合わせるために再分類の手続きを行わなければならない。
結論
TMOによるニース分類第11版の採用は、イラクの商標制度を国際基準に整合させるうえで重要な一歩となる。この移行は、国際的な調和や貿易の円滑化といった長期的な利点をもたらす一方で、係属中の商標出願人にとっては短期的な課題も生じさせている。円滑な移行を実現し、商標出願人が新制度に効果的に適応できるようにするためには、的確な実施と明確な指針が不可欠だ。