2025-04-25

中国:法院が「使用位置を限定する単一色の商標」の登録は可能と明らかにした事例 - UNITALEN

 先日、集佳が代理人を務めた世界的に有名な自転車用伝動機構と部品メーカーであるスラム社(SRAM,LLC)が国家知識産権局を提訴した第G1729330号「自転車用フリーホイール位置商標」拒絶査定不服審判行政紛争事件に勝利した。北京知的財産権法院は、国家知識産権局による拒絶査定不服審判の審決を取り消し、国家知識産権局に審決のやり直しを命じる一審判決を下した。当該事件は有名な「赤い靴底」事件以降、司法機関が「使用位置を限定する単一色の商標」という非伝統的商標の登録は可能であるという規則を再度明確にした事例である。

事件の概要
 スラム社は1987年に米国で設立され、自転車用部品の生産およびマウンテンバイクやロードバイク用伝動機構の開発に特化した企業であり、現在、世界最大のハイエンド自転車用部品ブランドの1つとなっている。スラム社は鮮明な特色のあるリング状の赤い要素を独創的に導入し、その部分を6番目のスプロケットと7番目のスプロケットの間の位置に嵌め込み、ブランド商標として使用し続けており、世界の多くの国、地域でも「6番目と7番目のスプロケット(歯車)の間のリング状の赤い要素(PANTONE色番号186)」を商標登録し、そのブランド標章を保護している。

 

【備考】係争商標の説明:「本商標は6番目のスプロケットと7番目のスプロケット(歯車)の間にあるリング状の赤い要素の保護を求めるものである。添付図はこの赤い要素の異なる角度からの見取り図である。ただし、図中の点線部分はこの要素の位置を示すためだけに用いられており、主張する位置商標の一部を構成するものではない」

 2022年10月19日、スラム社はドイツ特許商標庁に第302022116933号商標(「6番目のスプロケットと7番目のスプロケット(歯車)の間のリング状の赤い要素」)の登録を出願し、当該商標は2023年2月22日にドイツで登録が認められた。2023年5月11日、スラム社は当該商標を基礎商標として、世界知的所有権機関にEU、中国などの国と地域への保護領域の拡張を請求した。2024年6月19日、当該商標はEUにおいて登録が認められた。当該商標のドイツおよびEUでの出願および登録手続きは、ドイツの有名な法律事務所であるWeickmann & Weickmann Patent- und Rechtsanwälte PartmbBが代行し、当該事務所は本件でも証拠収集などの法律面でのサポートを提供した。

 2024年3月26日、国家知識産権局は当該商標には「3つの方向から示したスプロケットの図形の6番目のスプロケットと7番目のスプロケットの間に1つの赤いリングがある」ことを認定し、当該商標には識別性に欠けることを理由として、スラム社の保護領域の拡張の請求を却下した。スラム社はこれを不服として、直ちに北京知的財産権法院に行政訴訟を提起した。

法院の判決
 北京知的財産権法院は審理を経て、国際商標登録出願の中国での保護領域の拡張の審査は、世界知的所有権機関の当該商標に対する公告に基づき確定しなければならないことから、係争商標は「使用位置を限定する単一色の商標」に該当し、点線部分が示すスプロケットの外形は係争商標の構成要素として審査範囲に含めるべきではない旨を認定した。国家知識産権局が係争商標を「3つの方向から示したスプロケットの図形の6番目のスプロケットと7番目のスプロケットの間に1つの赤いリングがある」と認定したことは、係争商標に対する商標マークおよびその構成要素の認定の誤りであり、同局がこれを前提として下した決定は相応の事実的根拠に欠けており、法により取り消すべきである。国家知識産権局は係争商標に対して商標マークおよびその構成要素を正しく認定した上で、係争商標の顕著な特徴の有無について認定をやり直すべきである。

典型事例の意義
 本件は「赤い靴底」事件以降、中国の法院が「使用位置を限定する単一色の商標」の登録は可能であり、登録商標として中国で保護を受けることが可能であることを再度明確に認定した事例であり、中国の位置商標の保護のための新たな司法事例となった。また、法院も本件を通じて、国家知識産権局は出願された商標の顕著な特徴の有無を認定する前に、まず当該商標の商標マークおよびその構成要素を正しく定義すべきであり、その前提の下で初めて商標の顕著な特徴の有無を認定することができる旨を再度明確にした。

 

本文は こちら (集佳が代理人を務めたスラム(SRAM)社「自転車用フリーホイール」位置商標事件の一審で勝利、「使用位置を限定する単一色の商標」は登録可能であることが再度明確に)