2025年のプラギアリアス賞(Plagiarius Award)が発表された。
プラギアリアス賞は、模倣品が合法か違法かについては触れずに、製品やブランドに対する悪質な権利侵害に関する公衆の意識を高め、業界、政界、消費者を感化することを目的としたもので、ドイツのデザイナー、リド・ブッセ氏が1977年に模倣に対する皮肉を込めて創設した賞。「Plagiarius」はラテン語で「模倣品」「盗作」を意味している。
第1位:プライヤー ” KNIPEX(クニペックス)ツイングリップ”

写真左 真正品:KNIPEX-Werk C. Gustav Putsch KG, Wuppertal(ドイツ)
写真中、写真右 侵害品:temu.deで流通、TEMU Whaleco Technology Limited(アイルランド)が運営
プライヤー(写真中):Mix Together(中国の個人商店)
プライヤー(写真右):Decent Craftsman (中国の個人商店)
クニペックスの製品は効果的で革新的な美しいデザインだ。そのため、クニペックスは特許と意匠で製品を保護している:何千もの模倣品が世界のオンラインプラットフォームで販売されており、クニペックスはこの2つの 「ツイングリップ」模倣品を含む侵害品を常に監視し、削除している。前面把持と側面把持の組み合わせはユニークで、特に弾力性のあるジョイントは5段階に調節でき、さまざまなワークサイズに理想的に適応する。真正品と模倣品の外観上の違いは、ハンドルの滑らかなプラスチック部分だけだが、劣悪な品質は、安価な素材と粗悪な作り、操作が困難なプッシュボタン、そして化学蒸気により、寿命の短さとして現れている。クニペックスによるTemu(テム)への批判:知的財産権の存在が知られており、製品が「通知と削除」の対象となったにもかかわらず、同一または同様の模倣品が容易に再出品されてしまう。予防策が不十分であり、侵害者に対する制裁も不十分だ。
第2位:自転車用バスケット 「bikebasket」

写真左 真正品:Reisenthel(ライゼンタール)Accessoires GmbH & Co. KG, (ドイツ)
写真右 侵害品:manomano.deで流通、Colibri SAS – ManoMano(フランス)が運営
小売業者:「START」(会社名や住所のデータはない)
怪しい!オンライン小売業者「START」の法的情報(Imprint)の記載はなく、テスト購入の小包の送り主は「ケルスターバッハ(ドイツの地方都市)からの配送、小売業者ではない」とし、また、オンライン・マーケットプレイス「manomano」を運営するColibri社は、小売業者とバイヤーが使用する技術的設備を提供するだけで、契約の当事者ではないと宣言している。キャンセル時に、誰が責任を負うのか、誰が窓口なのか不明だ。責任者が特定できず、プラットフォーム運営者が責任者を指定できない場合、「製造物責任指令(Product Liability Directive)」に基づき責任を負うのはプラットフォーム運営者であり、該当する場合はフルフィルメントサービス提供者 (訳者注:商業活動の過程で、関連する製品の所有権を持たない倉庫保管、梱包、住所指定、及び発送、配送サービスのうち少なくとも2つを提供する自然人または法人)となる。同時に、プラットフォーム運営者は侵害品の提供に気づき次第、直ちにそれを削除する義務があり、さもなければ責任も負うことになる。Colibri社はライゼンタール社からの2度の通告に対して返答しておらず、弁護士からの警告に対してのみ返答している。ライゼンタール社はEU全域ですべてのデザインを保護し、無数の安直な模倣品に対して行動を起こしている。
第3位:グリーティングカードのモチーフを磁器製品の装飾に使用

写真真中 真正品:Atelier Jörg Mohme(ドイツのアートギャラリー)
写真その他 侵害品:フランスのギフト問屋を通じて流通
製造:中国
魅力的な製品デザインであれ、革新的な技術的ソリューションであれ、映画であれ、音楽であれ、ファッションであれ、あるいは今回のようにアートであれ、どれも当たり前のものはない。だからこそ、創造性、才能、独創性、創意工夫は高く評価され、保護されるべきなのだ。芸術家Jörg Mohmeの知的財産に対する関心が欠如しているため、フランスの小売業者は、「AFRICAN IMPRESSIONS」シリーズの著作権で保護されたモチーフを、事前の承諾なしに、大人気の磁器シリーズ35点の装飾として使用された。盗作が発覚したのは偶然だった。小売業者は理不尽な態度で著作物性を否定したため、Jörg Mohmeは訴訟を起こした。その後、9年にわたる神経をすり減らす裁判が続いた。リヨンの裁判所は、オリジナルの著作権保護と侵害の存在を確認し、小売業者に対し、販売停止と多額の損害賠償の支払いを命じた。単純で公正な解決策は、Jörg Mohmeにライセンス料を支払う代わりにモチーフを使用するよう求めることだっただろう。
2025年のプラギアリアス賞は こちら