2025-05-28

EU:背番号10のシルエットはマラドーナの商標権を侵害しない - Knijff Trademark Attorneys

伝説のサッカー選手マラドーナがこの世を去って何年も経つが、マラドーナの名前とイメージはいまだにナポリとアルゼンチンの街角で生き続けている。

アルゼンチン企業のSattvica S.A.(以下、「Sattvica」)は、マラドーナに関するすべての商標権を保有していると主張している。同社は150以上のマラドーナ関連商標を所有し、さまざまな国で登録している。マラドーナの相続人との係争は続いているが、Sattvicaは現在も法的手続きにおいて「MARADONA」商標を使用する権利を有している。

最近、Sattvicaは、この伝説的なサッカー選手と直接結びつく虞のある2つの欧州の図形商標の登録に対して異議を申立てた。欧州連合知的所有権庁(EUIPO)の異議部は最近、これらの件について決定を下した。

注目すべき点は、この2つの出願でローマ在住のLiya Chen(出願人)がマラドーナ本人からの委任状を持っていると主張していることである。両当事者から提出された証拠によると、異なる時点において、異議申立人と出願人の両方がマラドーナ本人からマラドーナの名前と肖像の使用と商標出願の権限を与えられていたようである。Liya Chenにとって残念なのは、異議部はこれらの証拠の有効性を評価する権限を有しておらず、この問題は異議申立て手続において検討されることはなかった。

Liya Chenが申請した出願商標のひとつは、マラドーナのサインと名前を含むマラドーナの肖像を示す図形商標に関するもので;

 

もうひとつの出願商標は、背番号10を背負ったサッカー選手のシルエットに関するものだった;

 

Sattvicaは、「MARADONA」商標に基づき、両商標に対して異議申立を行った。

肖像と名前に関する異議申立は極めて簡単で、類似する商品とサービスで混同の虞が認められた。異議部は、「MARADONA」という共通の姓が、両商標の類似性を立証する決定的な要素であると判断した。争われた商標は複雑なものであり、図形、文字、数字の要素が追加されているが、これらすべてが有名なサッカー選手マラドーナの識別に寄与している。一般大衆の認識において、このことに疑いの余地はない。もう一つの要因は、「MARADONA」がEU圏内では珍しい姓であることである。争われた商標は、有名なサッカー選手と先行する「MARADONA」商標を直ちに連想させ、混同の虞をもたらす。

したがって、この商標の登録は拒絶された。しかし、マラドーナがキャリアの大半で着用していたジャージ番号である背番号10のシルエットにも同じことが当てはまるだろうか。この商標には「MARADONA」という文字は含まれておらず、マラドーナを外観的に表しているに過ぎない。

Sattvicaの異議申立て理由は2つあった。第一に、先行する商標の評判である: 「MARADONA」は非常によく知られているため、図形商標はその名声に便乗することになり、「MARADONA」商標の識別性や評判を損なうことになるとされた。しかし、評判は商標の評判を示す証拠によって適切に立証されなければならない。異議申立人がそのような証拠を提出しなかったため、この主張は認められなかった。

2つ目の論点は、混同の虞に関するものである。図形には、カーリーヘアで象徴的と言える背番号10をつけたサッカー選手が描かれている。異議申立人は、これは他ならぬマラドーナを表していると主張した。背番号10とマラドーナ……サッカーファンにとっては、すぐに結びつくだろうが、サッカーにあまり詳しくない人にとっては、おそらく想像の域を出ないだろう。つまり、観念的にはマラドーナを連想する人もいるだろうが、それは主にサッカーに詳しい人、興味のある人である。外観的にも称呼的にも、この2つの商標は類似しないとされた。
 
EUIPO異議部は、2つの商標が同じ人物やアイデアを想起させるとしても、それが自動的に混同の虞につながるわけではない。特に、先行する商標が特別によく知られているわけでもなく特徴的でもない場合、マラドーナに関するものというような共通の意味だけでは十分ではないとして、異議申立を棄却した。公衆の一部にとって観念的なつながりの可能性は、混同の虞を立証するには不十分であるとした。

本文は こちら (Silhouette with number 10 does not infringe Maradona trademark)