2025-06-13

インド:模倣品に対するプーマの「爪」 - Chadha & Chadha IP

デリー高等裁判所で審理されたこの事件で、プーマSE(Puma、原告)は、被告のMahesh Kumarが「PUMA」の有名商標を不正に使用し、模倣品を製造・販売していたとして訴訟を提起した。
裁判所が任命した検査官の調査によって、プーマのロゴおよびアディダス、ナイキなど他ブランドの商標を使用した模倣品(靴、型など)が押収され、被告の違法行為が明らかになった。

裁判所は、商標侵害の重大性に関する過去の判例を引用し、このような行為がブランドの信用や消費者の信頼を損なう深刻な問題であることを指摘した。被告が答弁書を提出しなかったため、裁判所は原告の主張を認める略式判決(summary judgment)を下し、恒久的差止命令と損害賠償の支払いを命じ、被告に対してすべての侵害行為の停止を命じた。

経過
当初、裁判所は「ジョン・ドウ命令(John Doe order、不特定多数の侵害者に対して広く法的拘束力を持たせる強力な司法手段)」を出し、被告に対し「PUMA」の模倣品の製造・販売を禁じた。
2024年3月11日、被告は正式に当事者として訴訟に追加され、答弁書の提出が命じられたが、所定の期間内に提出せず、答弁権を喪失した。
その結果、裁判所は2024年12月9日に被告欠席のまま審理を進めた。

背景と事実関係
原告は、1948年に設立された世界的に有名なスポーツブランドで、「PUMA」およびそのロゴはインドを含む複数国で登録済だ。また、インドでは1980年代から存在感を示し、各種メディア広告や有名人の起用により広く知られている。
2019年12月30日には、インドで「PUMA」が「著名商標(well-known mark)」として公式に認定され、2024年2月19日にもその著名性が再確認された。

被告は無許可で「PUMA」ブランドの模倣品を製造・販売しており、原告は恒久的差止命令、損害賠償、帳簿開示、模倣品の引き渡しなどの救済を求めた。
調査により、東デリーで「PUMA」の偽造靴が大量に販売されていたことが発覚し、その供給元として被告の製造拠点が特定された。

2022年10月18日、裁判所により任命された地方検査官(Local Commissioner)の報告書には、原告の著名な「PUMA」商標や、アディダス、ナイキを含む著名ブランドの商標を不正に使用した模倣品が発見されたことが記載されている。模倣品には、スパッツ、靴底、靴が含まれていた。さらに、原告のロゴを刻印した金属型が発見され、被告の模倣行為をさらに裏付ける証拠となった。

裁判所の分析
裁判所は、Louis Vuitton対Capital General Store事件を引用し、模倣品製造は商標権侵害の中でも特に悪質であり、ブランド価値の毀損・消費者の誤認・国家経済への悪影響があると指摘した。
被告の行為は「第一級の侵害(first-degree infringement)」と見なされ、消費者を欺くものであり、プーマの商標の識別力・信用を著しく損なうと判断された。

また、原告の商標が「著名商標」として認定されていることから、より強い保護が与えられるべきとされ、消費者の混同を招くような模倣行為はインド商標法第29条第1項および第2項に基づく侵害に該当するとされた。

判決
裁判所は、原告が当該商標の先使用者・登録所有者であることから、商標法に基づく保護を受ける正当な権利者であると判断した。
被告が「PUMA」商標を模倣品に使用していたことは、侵害および詐称通用(他者の商品に見せかけて販売する行為)に該当するとの結論に達した。
被告が弁明を行わなかったため、裁判所は略式判決により原告の請求を全面的に認め、恒久的差止命令・損害賠償・その他の救済措置を命じた。
訴訟は原告勝訴で終結し、被告には侵害行為の即時停止が命じられた。

結論
この判決は、「著名商標」がインド法の下でいかに強力に保護されるかを示す好例だ。
模倣品対策において、商標権者が迅速に対応することで、証拠が明確な場合は略式判決により迅速な正義の実現が可能であることを裁判所は強調した。
模倣行為の拡大に対し、インドの司法はブランド保護を強化する方向で動いていることがわかる。

本文は こちら (PUMA’s Claw on Counterfeiters)