今やAIは、あらゆる分野で活用されており、単なる技術ツールから高度なビジネス戦略まで様々に浸透しているようだ。
しかし、AIの先駆者であるOpenAIでさえ、自社の名称を商標登録しようとした際、法的な現実に直面した。
OpenAI, Inc.は、文字商標「OPENAI」を、ソフトウェア、デジタルアプリケーション、インターネット及び通信サービス、クラウドソリューション、オンラインネットワーク等を指定してEUIPO(欧州連合知的財産庁)に登録出願した。
2024年12月5日、EUIPOは「OPENAI」商標の登録を拒絶した。関連する一般公衆はこの商標を「オープンにアクセス可能な人工知能」、すなわち「誰でも利用可能なAIサービス」と理解するとして、EUIPOは「OPENAI」という名称は識別力を欠くため、商標登録できないとの判断を下した。
これに対しOpenAI, Inc.は決定を不服として2025年1月に審判請求した。OpenAI, Inc.は、「OPEN」という語には複数の意味があり、出願商標はさまざまな種類の商品やサービスを指定していることから、それぞれ個別に登録性を判断する必要があると主張した。
EUIPOの審判部は拒絶決定を支持した。指定された商品・サービスの文脈において、「OPEN」という語は、IT関連の提供物が自由にアクセス可能または利用可能であると解され得るとした。情報技術分野においては、該商標は明確かつ一義的な意味を持つというのが審判部の判断だ。
さらにOpenAI, Inc.はさらなる反論として、「OPENAI」は使用により識別力を獲得しているとし、その裏付けとして複数の使用例を提出した。しかし、審判部はこれに対し、使用による識別力の獲得の主張は本質的識別力の問題とは別の問題であると強調した。使用による識別力の獲得を立証するためには、EU全域での十分な証拠を提出する必要がある。
EUIPOの立場は一貫している:「OPENAI」は識別力を欠くため登録できないというもので、商標登録に向けた唯一の残された道は、「使用による識別力の獲得」を立証することだ。OpenAIの知名度を考えれば、これは決して不可能ではないと思われる。とはいえ、OpenAI, Inc.が「OPENAI」という名称が使用により識別力を獲得したことを立証できるだけの十分な証拠を提出できるかどうかは、今後の注目点だ。
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