2025-07-08

EU:フェラーリが「テスタロッサ」の商標権を取り戻す - Marks & Clerk

2025年7月2日、EUの一般裁判所は、フェラーリの「TESTAROSSA(テスタロッサ)」商標登録を取り消すとしたEUIPO審判部の決定を破棄する判決を下した。

背景
「TESTAROSSA」はフェラーリが1984年から1996年にかけて製造し、この間に約1万台が生産された。

2014年と2015年に、ドイツの個人がEUIPOに対し、フェラーリが5年間継続してEU域内で「TESTAROSSA」商標を真正に使用していなかったとして、商標登録の取消しを求める手続きを開始した。

EUIPO取消部と審判部はともに、フェラーリが要証期間の5年間にフェラーリが「TESTAROSSA」の名称で新車を製造・販売していなかったことを指摘し、「TESTAROSSA」商標を真正に使用されていなかったとの判断を示した。 

また、要証期間に行われたテスタロッサの中古車販売については、フェラーリの同意が不要で取引が行われるため、フェラーリ自身による真正な使用にはあたらないと判断された。
さらに、フェラーリが提供していたテスタロッサ中古車およびその部品の真正性を証明する認証サービスについても、「TESTAROSSA」ではなく「フェラーリ」の商標の下で提供されていたものとされた。

一般裁判所の判断
フェラーリはEUIPOの決定を不服として一般裁判所に控訴した。
一般裁判所は、EUIPO審判部の判断とは異なり、「フェラーリによって認定された販売店や正規代理店による中古車の販売は、たとえ黙示であってもフェラーリの同意の下で行われていることを示すものとみなせる」(判決文第45段落)と認めた。
また、フェラーリは正規代理店や認定販売店を通じた一部のテスタロッサ中古車の販売に、認証サービスを通じて直接関与しており、このサービスが車両の真正性を確認するものであることも指摘した。

さらに、フェラーリはテスタロッサの部品やアクセサリの販売について以下の主張を行った。とりわけフェラーリのウェブサイトには、フェラーリが「1995年以前に製造されたフェラーリ車の純正部品の全世界における独占的な流通権を保有している」(判決文第89段落)と明記されており、証拠として提出された部品やアクセサリの販売は「フェラーリと経済的・契約上の関係にある正規代理店や認定販売店によるもの」であったと認められた。

加えて、フェラーリの認証サービスには、中古のテスタロッサ車両の主要部品の出所確認も含まれており、同様の理由から、裁判所はフェラーリが第三者による部品やアクセサリに関する「TESTAROSSA」商標の使用を黙示的に認めていたことを立証したと判断した。

この結果、一般裁判所はEUIPO審判部の全ての決定を破棄し、フェラーリの「TESTAROSSA」商標登録を復活させた。EUIPOは欧州司法裁判所に上訴することができるが、現時点ではフェラーリが中古車およびその部品の販売・認証を通じて真正な使用を立証することに成功したと言える。

これは自動車業界にとって歓迎すべき勝利であり、オリジナルメーカーが直接または黙示的に関与する中古販売を通じて、EU域内でビンテージモデル名の保護を継続する法的根拠を強めるものと考えられる。中古市場は特にビンテージモデルとその部品に関して、自動車業界の重要な一部分を形成している。オリジナルメーカーがフェラーリのような活動を通じて中古市場への関与を続ける限り、ビンテージモデル名の商標権が維持されることへの安心感が従来以上に高まるであろう。

もっとも、事案によっては、今回のように争われている商標の評判が、当該経済分野で市場シェアを維持または創出するための慣行を理解する要素の一つとなる可能性もある(判決文第22段落)。判決文第44段落で指摘されているように、特に需要の高い車両が商標権者の正規代理店や認定販売店を通じて販売される事実は、その車両の整備や部品・アクセサリの交換が、その商業的出所に影響を与えるような形で行われていないことを顧客に保証する役割を果たすことができるであろう(判決文第59段落)。

本文は こちら (Ferrari wins back trade mark rights to TESTAROSSA in the EU)