2002年に、宇宙技術を革新するという使命のもと設立されたSpaceXは、先進的なロケットや宇宙船を設計・製造・打ち上げる企業として世界的に知られている。
イーロン・マスク氏率いるSpaceXは、民間企業として初めて宇宙船を軌道に打ち上げ、地球へ安全に帰還させることに成功し、さらに国際宇宙ステーション(ISS)への有人宇宙船のドッキングを実現した。
しかしながら、SpaceXは航空宇宙産業の単なる先駆者ではない。商標保護にも非常に真剣に取り組んでいる。
最近、香港を拠点とする企業が、電子タバコやベイプ(Vape)を指定して、「SPACEX BAR」商標(下図)を欧州連合知的財産庁(EUIPO)に登録出願した。

SpaceXは躊躇することなく異議を申し立てた。でも、なぜSpaceXが異議を唱えるのだろうか。これらは全く異なる製品ではないのだろうか?
答えは単純明快だ。それはブランド価値の保護である。SpaceXはタバコブランドではなく、そのような製品と結びつけられることも望んでいない。法的に言えば、これは商標の希釈化(dilution)や毀損(tarnishment)を引き起こす可能性がある。もし著名ブランドがその識別力を失う、あるいは評判が損なわれるリスクがある場合、商標権者は法的措置を取る権利を有する。
批判的な立場からは、こうした異議申し立ては過剰反応ではないかと問う声もあるだろう。電子タバコの会社が、宇宙探査の象徴にどのように損害を与えられるのか、と。しかし、ブランドがすべてともいえる現代において、企業は自社の名称が無関係な分野で同一または類似の商標によって希釈化されることを許容する余地はないのではないだろうか。
異議を成功させるためには、まず商標権者が自身の商標が一定程度の知名度を有していることを立証しなければならない。SpaceXはその主張を裏付けるため、報道記事、ソーシャルメディア・エンゲージメント統計、広告宣伝の支出額などの豊富な証拠を提出した。
EUIPOは、これらの証拠がSpaceXの商標が実際に著名であることを十分に示していると判断した。このようなケースでは、たとえ異なる商品・サービスに登録出願された商標であっても、一般消費者が両商標の間に関連を想起する可能性があれば、法的措置をとることが認められる。EUIPOは、関連性があり得ると判断し、電子タバコを指定したEU商標の登録を拒絶した。
この事例は、著名ブランドが、自社の商標権の独占権を守る重要性を改めて浮き彫りにするものだ。特に、無関係な製品やサービスに使用される商標に対しては、さらに注意が必要だ。
本文は こちら (SpaceX challenges European trademark application for e-cigarette brand)