2025-08-14

インドネシア:商標の国際登録出願における拒絶対応 - Tilleke & Gibbins

国際商標登録のためのマドリッド制度は、一つの出願で複数の国に商標登録を行える、簡便かつ費用対効果の高い手段を提供している。インドネシアは2018年にマドリッド制度に加盟し、2024年だけでもこの制度を通じて8,600件以上の登録出願を受理した。この制度は有効ではあるが、登録手続の過程で拒絶が発生する可能性があることを、商標権者は認識しておくことが重要だ。インドネシアを指定する場合、出願人は以下の重要なポイントに十分留意しなければならない。

拒絶対応のための現地代理人の選任
暫定拒絶を受けた国際登録出願の出願人または代理人は、暫定拒絶に応答するため、インドネシア国内の代理人を選任する必要がある。この選任はインドネシアにおける拒絶対応のためだけのものであり、拒絶を受けていない場合には必要ない。また、現地代理人はWIPO登録代理人であってはならない。WIPO登録代理人の場合、他のすべての指定国における代理関係にも影響が生じるためだ。

応答期間
暫定拒絶への応答期間の計算方法は、DGIPR(インドネシア知的財産権総局)とWIPOとで相違がある。インドネシア商標法の下では、商標権者は土日および祝日を除く30営業日以内に応答を提出できるが、DGIPの暫定拒絶通知に添付されるWIPOの送付状には、通知の開始日と期限日が明記されており、これは土日祝日を含む30暦日で計算される。したがって、国際登録出願の暫定拒絶への応答は、形式的な不備を避けるため、WIPO送付状に従って提出すべきである。 

拒絶理由
国際登録出願がインドネシアの商標公報に掲載されると、DGIPの審査官による実体審査が行われる。商標は主に絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由に基づき審査される。
最も多い国際登録出願の拒絶理由は相対的拒絶理由、つまり先行する登録商標と類似するという理由だ。リスク軽減と効果的な戦略立案のためには、出願前に対象国での商標調査を行うことが推奨される。

拒絶理由を克服する方法
引用商標の状況を確認し、それに応じた戦略を立てることが重要で、以下は拒絶克服のための戦略例だ。
* 応答書の提出
外観・称呼・観念・商品の特徴の違いに基づく主張を提示して拒絶への応答書を提出する。
* 拒絶された区分の削除
多区分出願の一部区分が拒絶されると、全区分の審査が遅延する可能性があるため、拒絶が特定の区分に限られる場合、商標権者はその区分を削除し、残りの区分の登録手続きを進めることができる。
* 同意書または商標譲渡
DGIPは、出願をサポートため同意書の提出を奨励している。そのため、引用商標の権利者に接触し、両商標の共存登録を認める同意書を得ることが選択肢となる(審査官の裁量による)。引用商標が同一企業グループ内の会社に属する場合は、引用商標の所有権を譲渡し、両商標の権利者を同一にする方法もある。
* 商標出願の補正と再出願
商標に識別力のある要素を追加する、または特定の商品を除外して再出願することで、引用商標との類似を解消できる。引用商標の存続期限が近い場合、更新状況を監視し、更新されなければ国内ルートで再出願することも可能だ。また、インドネシアの指定を放棄し、改めて事後指定を行う方法もある。
* 訴訟提起
最後の手段として、引用商標に対して法的手続きを行うことができる。利用されていない商標の不使用取消請求や、類似または悪意を理由とする取消請求などが可能で、これらはインドネシア商業裁判所が管轄する。
* 応答審査の流れ
応答書が提出されると、DGIP審査官が約3~6か月以内に再審査する。この期間は審査官の業務量によって変動する。応答内容が認められれば、出願は登録段階に進み、DGIPはWIPOを通じて登録代理人に登録許可通知を発行する。

応答内容が認められなかった場合、DGIP審査官は現地代理人および登録代理人に最終的な拒絶通知を発行する。出願人は通知日から90営業日以内に商標審判委員会(Trademark Appeal Commission)へ不服申立てを行うことができる。不服申立てが行われなければ、最終拒絶を受け入れたものとみなされる。申立てが行われた場合、商標審判委員会は約4~6か月で審理を行う。 

結論
マドリッド制度を通じたインドネシアでの商標登録手続は、難しい面もあるが、適切な戦略と現地の専門知識があれば十分対応可能だ。拒絶理由を理解し、克服のための様々な手段を検討することで、登録可能性を大きく高められる。現地の弁護士に相談し、最新情報を把握しておくことが、円滑かつ効率的な登録手続のために重要だ。商標出願はそれぞれ固有の事情を持つため、インドネシアでのビジネス目標達成には、状況に応じたアプローチが鍵となるだろう。

本文は こちら (Responding to Refusal of an International Trademark Registration in Indonesia)