2025-08-04

工藤莞司の注目裁判:商標法3条1項3号等に該当するとした審決が支持された事例

(令和7年6月26日 知財高裁令和6年(行ケ)第10103号 「シングルモルト金沢」審決取消請求事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、「シングルモルト金沢」を標準文字で表してなり、33類「清酒、焼酎、合成清酒、白酒、直し、みりん、洋酒、果実酒、酎ハイ、中国酒、薬味酒」をその後「ウィスキー」と指定商品を補正した本願商標について登録出願をしたが、商標法3条1項3号及び4条1項16号該当として拒絶査定を受けたことから、拒絶査定不服審判請求(2023-11152)をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 本願の指定商品「ウィスキー」との関係において、本願商標を構成する「シングルモルト」と「金沢」の各文字部分は、「ウィスキー」の品質(種別)である「シングルモルト」と、その産地となる蒸留所又は貯蔵庫の所在地を表す「金沢」を結合したものといえる。そして、「シングルモルト金沢」を標準文字で表してなる本願商標を、指定商品「ウィスキー」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「金沢に所在する蒸留所等で生産されたシングルモルトウィスキー」との商品の産地及び品質(種別)を表示したものと理解するにとどまるといえる。したがって、本願商標は、これが指定商品である「ウィスキー」に使用された場合には、当該商標の取引者・需要者によって商品の産地、品質(種別)等の特性を表示するものと一般に認識されるものであり、産地及び品質を同じくするような商品の取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものというべきであるから、特定人によるその独占使用を認めることは 公益上適当としないものであるとともに、自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないというべきである。
 本願商標は、指定商品「ウィスキー」に使用すると、これに接する取引者、需要者は、「金沢に所在する蒸留所等で生産されたシングルモルトウィスキー」との商品の産地及び品質(種別)を表示したものと理解することになる。したがって、本願商標を「金沢に所在する蒸留所等で生産されたシングルモルトウィスキー」以外の商品に付して使用する場合には、商品の品質(種別)の誤認を生ずるおそれがあるというべきである。

コメント
 知財高裁は、本願商標は、指定商品の産地、品質表示であるとして商標法3条1項3号に該当すると判断したもので、4条1項16号該当を含めて審決と同様である。本願商標の「シングルモルト」は酒類の需要者にも知られたウィスキーの種別であって、これに有名な地名「金沢」を結合したに過ぎず、これが出所表示機能を有するとは思えない。原告は使用による出所表示機能性の取得については、何ら言及していない。