2025-08-20

EU:一般裁判所がルービックキューブ訴訟でカラー商標も無効と判断 - Novagraaf

特許権が失効した後、ルービックキューブの権利者は、商標登録によって保護を延長しようと試みた。数十年にわたる争いの末、その白黒商標に続き、カラー商標も無効と判断された。その理由をVolha Parfenchykが解説する。

1974年に発明された有名なルービックキューブは、20年間特許で保護されていた。その特許が失効すると、特許を保有していたSeven Towns Ltdは、商標法を用いて保護の延長を図った。同社は、黒白のキューブを描いた立体図形のEU商標(登録番号:000162784)およびカラーで描かれたEU商標(登録番号:009976788)を含む、いくつかの商標を登録した(左上図)。

しかし、長年にわたる法的論争の末、欧州司法裁判所によって両商標はいずれも無効とされた。白黒の商標は2019年に無効とされ、そして今回の判決で、カラー商標もEU一般裁判所によって無効とされた。 

ルービックキューブ事件の背景
問題となった商標は2012年3月5日に立体商標としてEUIPO(欧州連合知的財産庁)に登録された。
2013年1月25日、ギリシャのVerdes Innovations SA社は、EUIPOに対しそれらの商標を無効とする申立てを行った。無効申立ての根拠としては、2009年2月26日制定の理事会規則(EC)第207/2009号の第7条が挙げられた。同条は商標登録の絶対的拒絶理由・無効理由を定めており、とりわけ第7条1項(e)号(ii)では「技術的成果を得るために必要な,商品の形状又はその他の特徴からのみなる標章」は保護対象外とされている。

EUIPO異議部は、黒白キューブを描いた立体商標の取消審判の最終判断が出るまで手続きを停止した。その後最終決定が下されると、審理は再開された。

EUIPO異議部および審判部はいずれも、指定商品区分28類について当該商標の無効を一部認めた。特に審判部は、①キューブ各面の色の配置は商標の本質的特徴であり形状の不可分部分を構成していること、②それらの色の組み合わせは技術的結果を得るために不可欠であることを理由に、第7条1項(e)号(ii)に反するとの判断を下した。

ルービックキューブの現権利者であるSpin Master Toys UK Ltdは、この決定を不服としてEU一般裁判所に上訴した。

EU一般裁判所の判決
EU一般裁判所は2025年7月9日、EUIPO異議部および審判部の判断を支持し、上訴を棄却。ルービックキューブ商標の無効を宣言した。

形状の本質的特徴の機能的性格
一般裁判所は、先例を踏まえ、まず形状の本質的特徴を特定することが第7条1項(e)号(ii)の適用に不可欠であるとした。その目的は、形状全体が機能的・技術的目的を有するかを判断することである。もし形状の本質的特徴がすべて技術的結果を得るためのものであれば、その形状は機能的なものであり、商標として登録できない。

審理では、「色の違いが美的価値を持つ場合、それがどのように評価されるか」が重要な争点となった。商標権者は、今回のカラー商標は白黒商標とは異なり美的要素を含むため保護されるべきだと主張したが、一般裁判所は、形状の特徴が本質的である場合に限り、その美的価値が考慮されると判示した。単なる些末な装飾的特徴は無関係とされた。

色の違いは「本質的特徴」ではない
一般裁判所は、6色の具体的な配色は任意の要素に過ぎず本質的特徴ではないと判断した。重要なのは「面ごとに異なる色で対比を生む」という事実であり、特定の色の選択や配列は商標保護の決定に影響しないとされた。

色の違いは形状の不可分要素
さらに一般裁判所は、争点となる商標は立体商標として出願・登録された以上、色による対比効果を含むすべての特徴は形状と不可分であると述べた。したがって本件商標は第7条1項(e)号(ii)の対象となると判断した。

色の違いは機能的特徴
商標権者は「色や配列は単なる美的選択で技術的機能ではない」と主張したが、一般裁判所はこれを退けた。表面デザインの選択と技術的結果との間には因果関係が存在する。すなわち、その表面デザインが対比効果によってキューブの各面を識別できるようにすること自体が技術的機能であるとの判断を一般裁判所は示した。

「ジグソーパズル」への適用
商標権者は、ジグソーパズルが本質的に二次元的なものであるから、EUIPOがその決定を28類中の「ジグソーパズル」に誤って適用したと主張したが、一般裁判所はこの主張も退けた。一般裁判所によれば、「ジグソーパズル」という定義は、二次元の「絵」としてのジグソーパズルおよび立体的なジグソーパズルの双方を意味し得る。いずれの解釈を本件に適用すべきかについて、一般裁判所は、商標権者の利益のために二次元の「ジグソーパズル」のみに限定して解釈するべきではないとした。なぜなら、そのような解釈を許せば、商標権者は第7条第1項(e)号(ii)の適用を免れることが可能となるからである。指定商品リストを明確かつ正確に作成する義務に違反したことによって、商標権者が利益を得るべきではない。したがって、「ジグソーパズル」は三次元パズルをも意味するものとして解釈されるべきであり、これにより28類全体に対する本件商標の登録無効が正当化される。 

ルービックキューブ事件の意味
この判決によりルービックキューブの重要な商標権は失われたが、名称やロゴは依然として商標として保護されている。またオランダでは、キューブの幅・色・グリッドの太さの組合せが著作権で保護されている。さらにSpin Masterは欧州司法裁判所に上訴する可能性があるため、最終的な知的財産権の保護範囲はなお不確定である。

本文は こちら (EU General Court rules in latest Rubik’s Cube case)