2025-08-22

EU:新商標を選ぶ際に同じ業界の既存ブランドを考慮する重要性 - Knijff Trademark Attorneys

カナダに本社を置く玩具メーカーのスピンマスター(Spin Master Ltd.)は、世界的に有名な子ども向けの映画やゲームなど様々なメディア展開するフランチャイズ「PAW PATROL(パウ・パトロール)」の誇り高き所有者である。

2013年の放送開始以来、このブランドは真のマーチャンダイジングの巨人へと成長し、世界中で玩具や衣料品から書籍、アプリ、さらにはスナック菓子に至るまで10万点を超える商品を展開してきた。

「PAW PATROL」商標は商標登録簿にしっかりと登録されており、玩具、衣料品、印刷物、ゲームソフトなどを含む幅広い商品をカバーしている。スピンマスターは自社ブランドの保護に積極的で、最近もブルガリアの出願人が登録出願した「PAW PALS」商標に対して異議申立を行った。 

出願された商標は、犬や雲、花といった漫画風の図形要素に「PAW PALS」という文字要素を組み合わせた結合商標(下図)であった。スピンマスターは先行登録済みの文字商標「PAW PATROL」を根拠に異議を申し立てた。

 

出願商標の図形要素は目を引くものであったが、EUIPO(欧州連合知的財産庁)の異議部は、出所の混同を判断する際には文字要素の方がより重視されると強調した。その理由は明確だ。両商標には「PAW」や「PAW PA」という文字構造が共通している。外観的には両商標は文字冒頭が同じ音節を共有し、称呼的に非常に似ている。観念的にも、両商標は「動物」や「仲間」というテーマを想起させ、特に子ども向け玩具の文脈では混同につながりやすい。

「PATROL(パトロール)」の代わりに「PALS(仲間)」を加えたことや、追加の図形要素は、十分に明確な区別を生み出すには至らなかった。出願商標の指定商品(玩具を含む)は、スピンマスターの商品と同一、あるいは少なくとも非常に類似している。

結論として、消費者は「PAW PALS」を「PAW PATROL」のサブブランドや派生ブランドと容易に誤認する可能性がある。異議部はスピンマスターの主張を認め、外観的・称呼的・観念的に中程度から高い類似性があると認定した。したがって、出願商標の対象商品のうち同一または類似する商品について混同のおそれが真に存在すると判断され、異議申立は部分的に認められた。

この事例は、新しい商標を選ぶ際に、同業界に存在する強力な既存ブランドを考慮することの重要性を改めて示している。先行商標の識別性や評価は、その一部にのみ存在する場合もある。特に子ども向け玩具のように、消費者がブランドの拡張やバリエーションに慣れている分野では、混同が生じやすい。消費者は新しい商標をサブブランドと見なしたり、両商標の間に何らかの商業的つながりがあると推測する可能性が高いのである。

本文は こちら (PAW PATROL vs PAW PALS: Spin Master protects its pups)