ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)は、全米スポーツで1番人気を誇るプロアメリカンフットボール・リーグだ。
NFLで最も有名なチームの一つが、1933年に創設されたフィラデルフィア・イーグルスであり、長年にわたりフィラデルフィアのスポーツ文化の一翼を担ってきた。フィラデルフィア・イーグルスのファン層は、米国のスポーツ界でも最も情熱的であると評されている。

NFLチームの商標権を管理するNFLプロパティーズ・ヨーロッパ(NFLP)は、最近、下図の商標出願に直面した。

NFLPはこの出願を見過ごすことができなかった。というのも、その商標は、フィラデルフィア・イーグルスのワシのロゴと不自然なほどよく似ていたからだ。
しかし驚くべきことに、フィラデルフィア・イーグルスが登録していたのは「EAGLES」と「PHILADELPHIA EAGLES」という2つの文字商標だけであったことが、次の疑問を呼び起こすことになった。文字商標しか登録していなくても、純粋な図形商標に対して効果的に異議を申し立てることができるのか?
NFLPは、出願された図形商標と登録済み2つの文字商標との間に混同のおそれがあることを理由に異議を申し立てた。しかし外観的に両者に共通する要素はない。先に登録された商標はすべて文字のみで構成されており、出願商標は言語的な要素を一切含まない純粋な図形商標である。図形商標には外観的な要素しか含まれていないため、称呼的な比較は無意味だ。フィラデルフィア・イーグルス側は、「商標がワシを表している」という観念的な類似性に依拠して混同のおそれを立証しようとした。
しかし、欧州連合知的財産庁(EUIPO)はこの主張を認めなかった。というのも、出願された図形商標は消費者から見てワシではない鳥を表しているようにも受け取れるからだ。
混同のおそれを主張するには、商標同士に類似性があることが必須条件だ。今回はその類似性が認められなかったため、NFLPの異議は退けられた。すなわち、混同のおそれは存在しないと判断された。
NFLPはさらに、出願商標の使用が、NFLPの商標の評判にただ乗りする不当な利益、または評判を損なう不利益をもたらすとも主張したが認められなかった。なぜなら、先行する商標と新たに出願された商標の間に類似性がない以上、この主張の根拠も成立しないからだ。結果として異議申立ては全面的に棄却された。
フィラデルフィア・イーグルスのロゴが有名であることは否定しようもないが、それだけでは異議申立てに勝つための十分な根拠にはならなかった。要するに、文字商標だけでなく、ロゴ(図形商標)も登録しておくべきだったのだ。フィラデルフィア・イーグルスのような世界的に認知されたブランドであっても、ブランドの中核的外観であるロゴが商標ポートフォリオに含まれていないと、法的に脆弱な立場に立たされてしまうのだ。
では、中国の出願人はこれで欧州において自由にこの商標を使用できるのだろうか? それはおそらく難しいと思われる。商標が登録されても、「悪意に基づく出願」を理由に無効審判を請求されるリスクが依然として残っているからだ。
本文は こちら (Philadelphia Eagles forgot one key trademark – and it cost them)