2025-09-22

米国:バーボンの著名ブランドとパロディの境界 - Knijff Trademark Attorneys

バーボンウイスキーのメーカーズマーク(Maker’s Mark)は、バーボン業界における著名ブランドである。
1958年以降、メーカーズマークはケンタッキー州において製造されており、ライ麦の代わりに赤冬小麦(red winter wheat)を使用しており、滑らかで甘味のある風味を特徴としている。メーカーズマークの最も顕著な外観的特徴は、赤い蝋を手作業でボトルキャップに封蝋した仕上げにある。この外観および製法により、メーカーズマークは他のブランドとの差別化を確立している。

もっとも、異業種に属する企業が、既存の著名ブランドをパロディ化する事例は散見される。その論拠は「業界が全く異なるため、需要者の混同のおそれは低い」とするものである。

今回問題となったのは、Wigglewow社が販売した犬用おやつ「Maker’s Bark」である。「Maker’s Bark」はバーボンボトルを模した形状でキャップ部分に特徴的な赤い封蝋まで施されており、これはメーカーズマークにとって受け入れがたいことだった。

メーカーズマークは、商品の形状、赤い封蝋、配色、さらに「Maker’s Bark」という名称の選択を含む複合的要素が、メーカーズマークの商標と実質的に類似すると主張し、さらに、Wigglewow社の行為は故意による権利侵害にあたり、メーカーズマークの信用および営業上の名声を毀損するものであると指摘している。すなわち、「Maker’s Bark」の外観と名称の結合は、需要者を誤認・混同させる蓋然性を高め、ブランドの独占性を侵害すると主張した。 

ここで問題となるのは、商標法上ユーモアを目的とするパロディ表現と商標権侵害との境界がどのように画定されるかである。有名ブランドに対しては一般に広範な保護が認められており、たとえ異業種の商品であっても、その著名性に便乗して不当な利益を得たり、評判を毀損したりする場合には侵害が成立し得る。パロディは抗弁事由として一定の機能を果たし得るものの、商業的利用の場面においてはその適用範囲は極めて限定的である。本件「Maker’s Bark」に関しても、まさにその点が争点となることが予想された。

しかしながら、当事者間において司法判断を仰ぐことなく解決が図られた。結局、和解により、2023年8月19日をもってWigglewow社の犬用おやつは市場から恒久的に撤去されることとなった。所有者であるマーク・ファイファー氏にとって、「これ以上争う価値はない」ものであった。

本文は こちら (Dog treat takes a bite out of bourbon brand Maker’s Mark)