2025-10-16

インド:更新に瑕疵にあるとされ抹消された商標の権利回復を争った訴訟 - Chadha & Chadha IP

はじめに
「Rakesh Kumar Mittal 対 商標登録官」訴訟は、デリー高等裁判所における重要な判断に帰結した。デリー高裁は、原告Rakesh Kumar Mittal(M/s. Mittal Electronic Industries の代表者)の請願(Writ petition)を認めた。裁判所の命令は、被告である商標登録官に対し、原告商標「MILTON」を抹消(removal)した処分を取り消すよう命じるものであった。
本件訴訟の核心は、商標登録官が行政処分として行った「MILTON」商標の登録抹消にあった。商標「MILTON」は M/s. Mittal Electronic Industries により使用され、権利主張されていたもので、商標登録官が抹消処分を行った正確な理由は、更新不履行および手続上の瑕疵にあるとされたが、原告はこれを不服として裁判所に提訴した。

事実関係
原告は、マイクロフォン、拡声器用ホーン、増幅器、ラウドスピーカー、変圧器、ホーンユニットおよびその部品の事業を行っている。1994年、原告は図形商標「MILTON/」を登録出願(出願番号627446)し、2003年に登録証が交付された。
その後、原告は商標登録を適切に更新せず、1999年商標法第25条に基づく要件を満たさなかったが、第25条第3項は、商標登録官に対し、登録商標の権利者に対してその有効期間満了の事前通知を行う義務を課しており、通知には満了日および更新条件(手数料の支払条件等)を記載しなければならない。商標登録官は、所定の期間内にそれらの条件が適法に充足されないときは当該商標を登録簿から抹消する裁量を有すると規定している。

但し、この抹消には例外規定がある。申請が所定の様式でされ、所定の手数料及び割増手数料が当該商標の最後の登録期間満了の日から6月以内に納付されたときは、登録官は当該商標を登録簿から抹消せず、10年間、商標登録の存続期間を更新する。この場合、登録官は必ず本規定を遵守し、商標権者に対し Form O-3(現在は Form RG-3)通知を送付する義務を負う(商標法第25条第3項)。

審理
本件において原告は、被告の商標登録官が規定期間内に当該通知を送付しなかったため、登録官には商標を抹消する権限がなかったと主張した。さらに、原告は情報公開申請を行い、Form O-3 通知が送達されていなかったことを確認した。

デリー高裁は、商標法第25条第3項は商標規則第64条第1項と併せて解釈されなければならないと判示した。そこでは、通知送付の期間について「満了日の少なくとも1か月前から3か月前まで」と規定されている。この前提条件は、他の法域でも一般に認められている規範で、「Union of India」対「Malhotra Book Depot」事件においても、デリー高裁の合議審は、法律が包括的な手続を規定している場合にその手続を拘束力のないものとみなすことは正当化されないと判示した。

加えて、「Cipla Ltd. 対 Registrar of Trade Marks & Anr.」、「Kleenage Products (India) Pvt. Ltd. 対 Registrar of Trade Marks & Ors.」、「Promoshirt SM. Ltd. 対 Registrar of Trade Marks」、「Gopal Ji Gupta 対 Union of India」、「Ashok Bhutani 対 The Registrar of Trade Marks & Anr.」といった複数の判例においても、単に有効期間が満了したという理由だけでは、商標を自動的に抹消する正当化事由とはならないと繰り返し判示されている。

判決
デリー高裁は、本件事実関係に照らし商標登録官が商標法第25条第3項および商標規則第64条第1項に従った適正手続を履行しなかったため、当該商標の抹消は誤りであるとの判断をした。すなわち、原告に対して有効期間満了および更新条件を通知する Form O-3 通知を送付しなかったことは、到底維持し得ないものであるとした。

デリー高裁は次のように判示した。
「原告に対し、登録有効期間の満了およびその更新条件について通知がなされなかった以上、当該商標は誤って登録簿から抹消されたものである。被告が法定の手続要件/前提条件を遵守しなかったことから、「MILTON」商標の抹消は明白に違法である。」

結論
デリー高裁は原告の主張を認め、被告に対して「MILTON」商標を登録簿に復元し、権利を回復するよう命じた。本判決は、商標の恣意的な抹消を防止し、必ず法定の適正手続を経て処理されることを確保するという、厳格な手続的枠組みを確立するもので、これにより、不当な商標抹消を防ぐとともに、公平性および透明性の原則を維持することが強調された。

本文は こちら (”MILTON” Resurrected: High Court Overturns Trademark Removal)