2025-10-09

パキスタン:「Starbucks」対「Sattar Buksh」、商標法の下でパロディが許容されるか - Knijff Trademark Attorneys

パキスタンでコーヒーが飲もうと街を歩いていると、「サッタル・バクシ(Sattar Buksh)」というチェーン店を見つけるかもしれない。この店のブランド表示は、つい最近まで「スターバックス(Starbucks)」と驚くほどよく似ていた。

当然ながら、スターバックスはこれに気づいて、商標権侵害を主張して訴訟を提起し、消費者の混同、スターバックス・ブランドへのただ乗り(フリーライド)、およびそれらの損害を訴えた。

サッタル・バクシ側は、スターバックスから着想を得たことを公然と認めている。創業者らは、「Sattar Buksh」という名称が「Starbucks」に似て聞こえることを面白がっていたという。ロゴも酷似しており、緑色の背景に円形の中の顔があるという構図で、スターバックスの象徴的な髪の長いギリシャ神話に出てくる人魚「セイレーン」の図柄にとても似通っていた。

 

これはパロディといえるのだろうか。サッタル・バクシ側によれば、パロディということでようだ、ただし、全く異なる文化的意味をもつパロディだという。
「Sattar」と「Buksh」という名前の起源は独立しており、「Sattar」はパキスタンで一般的な人名、「Buksh」はウルドゥー語で「与える者」あるいは「使用人」という意味である。訴訟で、サッタル・バクシの創業者はこの名称が500年前のアラビア語文献にも登場することを示し、この名称が文化的引用に基づくものであって、スターバックスへのオマージュではないと主張した。

では、著名ブランドをパロディ化することは許されるのか。著作権法とは異なり、商標法には明文化した「パロディ目的の利用を一定の条件下で侵害としない法的な特別扱い」は存在しない(少なくともEUでは)。混同のおそれがある場合、商標権者は法的措置を取ることができる。また、著名商標であれば、自らの評判へのただ乗りや商標の希釈化を理由に保護を主張することも可能だ。いずれの場合も、その使用が商業的意図でなされていることが要件となり、本件ではその要件は満たされていた。

一方で、ある標章が何らかの主張を表す象徴として用いられる場合(たとえば、反石油キャンペーンで石油会社のロゴを改変して使用するような場合)には、商業的意図はないといえる。ベネルクス地域では、商標権者はブランドを損なう類似標章の「商業的意図以外のその他の使用」に基づいて主張することもできるが、使用者はその標章を用いる正当な理由があることを立証して抗弁することができる。結局のところ、商標のパロディ問題では、裁判所が商標権の保護と表現の自由との均衡を取る必要がある。

本件は最終的な判決まで至らなかった。サッタル・バクシがロゴの色彩と形状を変更し、スターバックスとの紛争は解決された。この結果をメディアは「スターバックスに対抗し存在感を保った」サッタル・バクシの勝利として広く報じたが、法的にはスターバックスの勝訴とみることもできる。それにもかかわらず、この騒動がサッタル・バクシの知名度を大いに高めたことは間違いない。 

本文は こちら (Starbucks vs. Sattar Buksh – When parody is permissible under trademark law)