2025年10月1日より、韓国特許庁(Korean Intellectual Property Office, 「KIPO」)は、国務総理室所属の知識財産処(Ministry of Intellectual Property, 「MOIP」)へと昇格した。
これまで韓国特許庁は、産業通商資源部(日本における経済産業省に相当)傘下の外庁として、特許、商標、デザインの審査及び登録等の業務を行ってきた。ただし、国内外で発生する知的財産権に関する紛争への対応をはじめ、知的財産権の保護に関する業務と知的財産権の創出及び活用に関する業務は、科学技術情報通信部等の様々な部署との間でそれぞれの役割を分担して担当していたため、総合的に対応するには困難があると評されてきた。
こうした中、韓国政府は特許庁を「知識財産処」に昇格させ、知的財産に関する政策・施策のコントロールタワーとしての役割を遂行するために組織へと改編した。これにより、従来は1官9局1団57課、3所属機関、1,785人という規模であった組織が、1官10局1団62課、3所属機関、1,800人に拡大されることとなる。中でも最も大きい変化とされるのは「知識財産紛争対応局」の新設である。従来は「課」単位(「産業財産紛争対応課」)で行っていた業務を「局」単位へと拡大させ、知的財産紛争の発生時には国レベルでの迅速な対応をサポートすることを可能にする。また、各部署に分散していた知的財産に関する業務を総括・調整することにより保護の死角地帯が発生しないようにし、新たな知的財産の保護の仕組みも設ける予定とのことである。

加えて、知的財産権の政策及び創出・活用等を担当している「産業財産政策局」を「知識財産政策局」へと名称変更をし、局内には「知識財産取引課」を新設した。その目的として、R&Dを通じて高品質の知的財産を確保し、取引と事業化を通じて収益を創出し、R&D再投資へと繋がる「知識財産好循環エコシステム」を提供すると知識財産処は説明している。
この度の特許庁から「知識財産処」への昇格は、汎政府知的財産政策の樹立とその総括調整、知的財産紛争への戦略的対応、知的財産の取引活性化等の推進により国のイノベーション競争力を牽引することを狙いとする政策の一環としてなされたものと理解できる。