2025-10-24

EU:「MICK JAGGER」商標が取消された理由(現時点での話) - Knijff Trademark Attorneys

デンマーク企業「Jagger Junk」が争いを挑んだのは、世界有数の著名人ミックジャガー(MICK JAGGER)であった。
「Jagger Junk」を運営するデンマーク企業は、「MICK JAGGER」商標(ローリング・ストーンズの知的財産権を管理するオランダ法人 Musidor B.V. により保有)について、その取消しを求めた。

Jagger Junkによれば、当該商標は過去5年間、欧州連合域内で真正な使用(genuine use) がなされておらず、したがって商標保護を維持するための要件を満たしていないというものだ。

これに対しMusidorは、少なくとも一部の指定商品・サービス(特に音楽ファイル及び娯楽サービス)については使用したと反論した。Musidorはそれら以外の指定商品・サービスについては争わなかった。Musidorは、ミックジャガー本人およびライセンシーによる使用も、真正な商標使用として認められるべきであると主張した。

Musidorの主張によれば、「MICK JAGGER」という名称は、単に人物を示すものにとどまらず、音楽及び娯楽分野におけるブランドや品質保証の表示としても機能しており、また、レコーディングされた音楽の販売やライブ・パフォーマンスにおいて、アーティスト名と商標が一致しているため、商標として実際に使用されていたというものであった。
さらにMusidorは、ミックジャガーの名声が世界的なものであるからEU域外での販売実績も考慮すべきであると主張した。

しかし、欧州連合知的財産庁(EUIPO)はこれらの主張を認めなかった。Musidorが提出した証拠は限定的なものにすぎないと判断された。該当する期間外のものもあり、EU域外での販売に関するものもあった。EUIPOは、名称の人物の名声や評判は実際の商標使用に代わるものではないとし、商品・サービスに関して「MICK JAGGER」という名称が商標として商業的に使用されたと認めるには証拠が不十分と判断した。

このように十分な証拠が不足していることから、EUIPOはJagger Junkの取消請求を認めた。その結果、「MICK JAGGER」商標は全面的に取消された。
ミックジャガーは依然として世界的なアイコンであるものの、現時点ではEUにおける商標権を放棄せざるを得ない状況となった。
Musidorは、この決定を不服として上訴した。

本文は こちら (The end of the MICK JAGGER trademark (for now))