2025-10-22

EU:著名人にとって教訓となる「ハーランド」商標事件 - Knijff Trademark Attorneys

英国プレミアリーグのマンチェスター・シティに所属するアーリング・ブラウト・ハーランド(Erling Braut Haaland、以下「ハーランド」)は「ターミネーター」と呼ばれている。ハーランドのニックネームは、ハーランドのフィジカル的存在感―身長約2メートル、戦車のような体格、そして無表情で冷徹な表情―にぴったりであり、またゴールを狙う執念深い集中力をも完璧に言い表している。 

最近、ハーランドはサッカー・フィールドではなく、商標の舞台で争うことを余儀なくされた。相手はポーランドの個人であった。このポーランド人は、「HAALAND」という文字商標を欧州連合商標として登録しようと思いついたようで、おそらく、ハーランド本人がまだ自らの名前を商標登録していないことに目を付け、その隙を突いて利益を得ようと考えたのだろう。しかし、事態はポーランド人の思惑どおりには進まなかった。

ハーランドが自らの氏名「HAALAND」を商標出願すると、このポーランド人は、先行登録を根拠として異議申立てを行ったのである。冷静かつ計算高いハーランドは、これに対し、EUIPO(欧州連合知的財産庁)に無効審判請求を提起し、ポーランド人の商標は「悪意の出願」だと主張した。ハーランドによれば、このポーランド人はハーランドがどういう人であるかを十分に知って、意図的にハーランドの名声を利用して利益を得ようとしたというものである。

もっとも、「自らが著名人である」と主張する人は、その著名性を立証しなければならない。そこでハーランドは、自身の国際的知名度を示す大量の証拠を提出した。報道記事、スポンサー契約、さらにポーランド国内の新聞記事において、自身がレヴァンドフスキと並んで頻繁に言及されていることを示す証拠などである。

これに対し、ポーランド人側は創造的な弁明を試みた。すなわち、「HAALAND」という名称はサッカー選手ハーランドに由来するものではなく、単なる偶然の一致にすぎないと主張したのである。その語源は、ポーランド語の「hala」(ホールまたは草地)と英語の「land」(土地)を組み合わせたものだという。また、外国サッカーはポーランドでは有料チャンネルでしか視聴できないため、ハーランドという選手の存在をそもそも知らなかったと述べた。さらに、「Haaland」はノルウェーでは一般的な姓であると補足した。

しかし、EUIPOはこの主張を受け入れなかった。EUIPOの判断は、商標出願時点でハーランドはすでに国際的に著名であり、ポーランドでも広く知られていたと認定された。ポーランド語「hala」と英語「land」を組み合わせたという説明も、説得力のないものとして退けられた。また、EUIPOは出願の動機にも着目した。すなわち、小規模な電気設備業を営む者が、なぜ突然、化粧品、スポーツウェア、栄養補助食品など自らの業務と無関係な商品区分について商標を登録しようとしたのか。そして、なぜハーランド本人の商標出願に異議を申し立てたのか。これらの点から導かれる結論は明白であった。すなわち、ポーランド人は悪意をもって出願を行い、ハーランドの名声に便乗しようとしたのである。

その結果は当然であった。「HAALAND」商標は無効と宣言され、ポーランド人は手続費用の負担を命じられた。

ハーランドはこのような事態を防ぐことができたのだろうか。もしハーランドが早い段階で自身の名前を商標登録していれば、今回のような法的トラブルを完全に回避し、金銭的損失も防げたはずである。この事件は、自らの名前やブランドを予防的に保護しておくことの重要性を示す好例であり、とりわけ著名人にとっては有益な教訓といえる。もちろん、商標権を維持するためには一定の商業的使用が必要だが、ハーランドのような人物にとっては、財団設立、アパレルブランド、スポンサー契約など、商業利用の手段はいくらでも存在する。 

この事案は決して特別のものではない。EUIPOは、かつて同様に著名サッカー選手ネイマールの名を無断で出願した商標が無効とされた、いわゆる「ネイマール事件」にも言及している。どうやらこの「ターミネーター」は、フィールド上だけでなく、法廷においても得点を重ねたようだ。

本文は こちら (Haaland brand stolen)