2025-10-17

EU:2024年、3億8,000万ユーロ相当の模倣品1億1,200万点を押収 - EUIPO

2024年、欧州連合(EU)域内の各当局は、1億1,200万点を超える模倣品を押収し、その推定小売価格換算額は38億ユーロ(約6,000億円)を超えるものとなった。
この統計は、欧州委員会の税制・関税同盟総局(European Commission’s Directorate-General for Taxation and Customs Union , DG TAXUD)および欧州連合知的財産庁(EUIPO)が共同で公表したものであり、EU加盟国の税関、警察、市場監視当局による協調的な取締りの継続的な強化を反映するものだ。

知的財産権行使の動向
押収件数の総数は、記録的な数字となった2023年を下回ったものの、過去2番目に多い水準を記録した。2022年と比較すると、2024年の押収件数は30%以上増加しており、実体市場およびデジタル市場の双方における知的財産侵害の規模と複雑性が依然として大きいことを浮き彫りにしている。

特筆すべきは、押収された件数が減少しているにもかかわらず、押収品の推定小売価額が過去最高を記録した点だ。この増加は、押収された模倣品の単価上昇によるものであり、知的財産侵害商品の性質および市場への影響の質的変化を示唆している。

消費者の安全、公正な競争、イノベーションへの脅威
模倣品は依然として、消費者の安全、公正な競争、そして技術革新を脅かす存在で、対象分野は、従来型の製品(玩具、香水、化粧品、衣料品、録音済みCD/DVD(ソフトウェアを含む))から、電子タバコの蒸気を吸引する(vaping)機器といった新しい商品カテゴリーまで拡大している。

差押えの多い商品カテゴリー

 

また、新興技術の進展は、より精巧な模倣品の増加を助長している。
さらに、アプリケーション・ソフトウェアやレトロゲームコンテンツに対する需要の高まりが、著作権侵害型の模倣品の急増を引き起こしている。

このような傾向は、実体市場とデジタル市場の双方にまたがる知的財産侵害の構造が、ますます複雑化していることを如実に示している。また、新興技術の進展は、より精巧な模倣品の増加を助長している。

押収実績:7加盟国で全体の90%
2024年において、7つの加盟国の当局が押収件数および押収価額の90%を占める結果となった。
具体的には以下の通り;
* イタリア、スペイン、フランス、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、ポーランドにおける押収品の総数量が全体の90%を占めた
* イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、ギリシャ、オランダにおける押収品の推定小売価額の総額が全体の90%を占めた

データ分析のための新たなツール:知財権執行押収ダッシュボード(IP Enforcement Detentions Dashboard)
政策分析および法執行戦略のさらなる支援に向けて、EUIPOは新たに「知財権執行押収ダッシュボード」を導入した。この対話式デジタル・プラットフォームは、押収データを視覚的かつアクセスしやすいデジタル体験として提示するものであり、2023年年次報告書の成果を基盤に構築されている。
データをグラフで可視化できるPower BIを用いて開発されたこのダッシュボードでは、ユーザーが以下の3つの観点からデータを探索できる;
* 全体統計(Overall figures)
* 警察および市場監視当局による域内押収(Internal market detentions)
* 税関による国境押収(Border figures for customs detentions)

この新しいツールの利用に伴い、EUIPOは次の目標を掲げている;
* ユーザーエンゲージメントの強化
* データ探索性および透明性の向上
* すべてのデバイスにおける利用可能性と応答性の改善

これらの改善は、EUIPOが掲げる、証拠に基づく政策立案(evidence-based policymaking)を支援し、知的財産権執行コミュニティ間の協働を促進するという使命を具体化するものだ。
この報告は、EU域内における模倣品・海賊版対策の進展を示すと同時に、知的財産権執行のデジタル化と可視化を加速するEUIPOの新たなアプローチを明確にしている。

本文は こちら (European Union seizes 112 million counterfeit items worth €3.8 billion in 2024)