2025-11-14

英国:ケンブリッジに見る早期かつ戦略的な商標登録の重要性 - Marks & Clerk

ケンブリッジは、何世紀にもわたる学問的卓越性で知られているが、現代においてはイノベーションの拠点としても際立っている。WIPO(世界知的所有権機関)の2025年版「グローバル・イノベーション・インデックス」では、人口密度に対して最も科学技術集約度の高い都市としてヨーロッパ第1位(世界第2位)に選ばれた。バイオテクノロジーの革新からAIスタートアップまで、この都市は世界的に認知されたブランドを次々に生み出しており、それに伴って商標保護の戦略的必要性も高まっている。

英国知的財産庁(UKIPO)は都市別の商標出願件数を公表していないが、地域別統計ではイースト・オブ・イングランド地域が商標出願件数で英国第4位となっている。ケンブリッジはその地域で最大の大学都市である。UKIPOの統計によると、出願人住所に「Cambridge」または「Cambridgeshire」を含む出願は、2024年にイースト・オブ・イングランド地域の新規出願の約10%を占めた。

他の「イノベーションクラスター(革新が活発に生まれる地理的な集積地)」と比較しても、ケンブリッジは学術研究から直接生まれる高成長企業の密度が極めて高い点で際立っている。この傾向の中心的役割を果たしているのがケンブリッジ大学であり、その商業化部門である「Cambridge Enterprise」を通じて、研究者は知的財産(商標を含む)の保護と収益化の支援を受けている。

商標は、研究成果を収益へとつなげる過程において不可欠であり、スタートアップが信頼性を確立し、投資を呼び込み、競争の激しい市場で差別化を図るための鍵となる。ケンブリッジでは、学界と産業界の協働文化によってこのプロセスがさらに加速されている。

ARM、Darktrace、Abcamといった企業はその好例である。いずれも技術的基盤から出発し、やがて世界的ブランドへと成長した。彼らの成功は、商標を早期かつ戦略的に登録する重要性を物語っている。それは単なる法的保護のためではなく、市場や投資家の信頼と認知を築くためでもある。

スタートアップにとって商標法の運用はしばしば難題となる。よくある誤解として、「会社名を商標登録すればいい」というものがあるが、これは誤りである。会社登録簿で利用可能な名称であっても、それが商標として法的に利用可能とは限らない。侵害訴訟や高額なブランド変更を避けるためには、初期段階での商標クリアランス調査が不可欠だ。

特にケンブリッジでは、多くの企業が地名をブランド名に取り入れる傾向があり、その際、包括的な商標権を有するケンブリッジ大学の権利を侵害しないよう注意が必要となる。

商標出願は自分で行うことも可能だが、商標専門家の支援を受けた場合の方が統計上登録成功率は大幅に高くなる。英国の出願の約70%は自己出願だが、代理人を通じた出願の方が2倍以上の確率で登録に至っている。

これは、商標専門家が登録可能な商標選定を助言し、事前調査で既存権利との衝突を回避し、商標庁の要件に沿った商品・サービス指定を適切に作成できるためである。これらの手順によって異議や拒絶のリスクを最小化でき、万一問題が発生しても最適な対応を導くことができる。

商標は単なるマーケティングの象徴ではない。それは、アイデアを成長・投資・商業的成功へと導く戦略的資産である。学問と産業の境界がますます曖昧になるこの都市において、ブランド保護はイノベーションの旅の不可欠な一部である。研究者、起業家、投資家すべてに共通する教訓は明確だ――商標のことは早い段階から考え始めるべきである。ケンブリッジでは常に「次の大きなアイデア」が生まれつつあり、それには長く続く名がふさわしい。

本文は こちら (Town, Gown, and Trade Marks: How Cambridge’s Innovation Ecosystem is Shaping Brand Protection)