英国の大手ホテルチェーンPremier Innは、「rest easy(安心して休む)」という表現の使用に関してeasyGroupが提起した商標権侵害訴訟で勝訴した。
この判決は、一般的に使用される用語が関係する商標保護の限界を明確に示すとともに、商標紛争において用語が使われる背景や状況および消費者の認識が果たす役割の重要さを再確認させるものである。Mona Asgariが解説する。
事件の概要
「easyJet」や「easyHotel」といった著名な「easy」ブランドの所有者であるeasyGroupは、Premier Innによる「rest easy」という用語の使用が、easyGroupの登録商標である「easyHotel」や「Rest Easy Apartments」など複数の商標権を侵害していると主張した。
これに対しPremier Innは、この表現は単なる記述的なものであり、消費者が「rest easy」をeasyGroupの「easy」ブランドと関連づけて認識することはないと反論した。
2025年8月、高等法院(High Court)はPremier Innの主張を認め、Premier Innのマーケティング・スローガンとeasyGroupの登録商標との間に混同のおそれは存在しないと結論づけた。
「Rest Easy」商標侵害訴訟における裁判所の判断
判決において高等法院の裁判官は、「平均的消費者」はPremier Innが使用した標章とeasyGroupの商標との間に「関連性」を見出すことはないとの判断を示した。
高等法院は、easyGroupが過去の事件(例:easyGroup Ltd 対 Easyfundraising Ltd)において、「easy」を構成要素とする商標ファミリー(いわゆる“family of marks”)を根拠に権利を主張し、成功した事例があることを認めつつも、本件でeasyGroupはファミリー商標の法理に依拠しなかった点を指摘した。また、この「商標ファミリー」論の不在に加え、「rest easy」という用語の記述的性質が、本件判断において重要な要素となった。
判決への反応と今後の見通し
判決後、easyGroupは声明を発表し、本判決には「明白な法的誤り」が含まれ、「いくつかの認定はばかげている」と強く批判し、控訴する意向を示している。
ブランド保有者への主な示唆点(Key Takeaways)
本判決は、商標権者およびブランド保有者に対して以下の重要な点を改めて示唆するものである;
一般的な用語には限界がある(Common language has limits)
強力なブランドとしての評価や認知が存在しても、商標権の保護は一般的または記述的な用語にまで当然に及ぶものではない。
用語が使われる背景や状況が重要である(Context matters)
混同のおそれの有無は、商標権者のブランド全体における位置づけよりも、標章がどのように使用され、平均的消費者がそれをどのように認識するかによって判断される。
「商標ファミリー」への戦略的依拠(Strategic reliance on a ‘family’ of marks)
企業が複数の「サブブランド」を展開する場合、商標ファミリーの概念を明示的に主張することは、侵害主張を補強し得る。ただし、それは適切に主張され、証拠によって裏付けられている場合に限られる。
今回の判決は、著名ブランドの所有者であっても、独占権の範囲について現実的な認識を持ち、権利行使とその限界とのバランスを取る必要があることを再確認させるものとなった。
本文は こちら (Premier Inn can ‘Rest Easy’ in UK trademark dispute with easyGroup)
