ドイツ生まれのイエーガーマイスターはハーブ系リキュールとして何十年もの間広く知られている。
イエーガーマイスターのボトルはひと目でそれと分かる。緑色のボトルと、ラベルに描かれたゴシック体の文字「Jägermeister(イエーガーマイスター)」と象徴的な雄鹿の頭部という要素が相まって、独自で極めて識別力の強いデザインを形成している。最近、イタリアのPolini Groupが、文字「Alten Kräuterfrau」を配した新たなラベルをEUIPO(欧州連合知的財産庁)に商標出願した。これに対し、イエーガーマイスターは、Polini Groupのボトル・デザインがイエーガーマイスター・ボトルの外観に過度に依拠しているとして異議申立てを行った。

両社のボトルおよびラベルは類似しているのだろうか。多少は似ているが、非常に似ているというほどではないように思える。この点を理由に、当初EUIPOはイエーガーマイスターの異議申立てを棄却した。イエーガーマイスターはこれを不服として審判部に上訴し、審判部は商標間にわずかな類似性が存在するとの判断に至った。そのうえで、異議部に差し戻して再度の審理を命じた。差し戻しを受けた異議部は、混同をまねくおそれがあると判断し、異議申立てを認容した。Polini Group はこの決定を不服として上訴したが、成果は得られなかった。
審判部はこの決定において、イエーガーマイスターがドイツ市場のハーブビター系の飲料としてとても強い顧客周知性を享受していると認定した。その立証は、マーケットデータ、販売実績、新聞記事、そして長年にわたる使用実績といった、広範な証拠によって裏づけられていた。
商標間にわずかな類似性が存在することはすでに確定していた。また、両商標は同一の商品に関連している。そうであれば、消費者が両商標を関連づけて認識する可能性はあるかどうかという点について、審判部は「ある」と判断した。両ラベルは、狩猟やハーブにまつわる伝統的で、ほとんど民俗的ともいえる趣を喚起する。また、ゴシック体の文字、配色、ラベルの縦長レイアウトといった一定の様式を共有している。イエーガーマイスターの強い著名性を踏まえると、これらの要素の組み合わせは、陳列棚で商品が並んだ際、平均的消費者が両社のボトルを相互に関連づけてしまう可能性を生じさせるというものだ。
審判部は、出願商標がイエーガーマイスターの著名性にフリーライドし、不当な利益を得るおそれを完全に排除することはできないと判断した。両社はいずれも同じ飲料、つまりハーブ系リキュールを提供しているため、イエーガーマイスターの肯定的な評価がPolini Groupの商品へ結びつくことは、十分に蓋然性がある。そのため、イエーガーマイスターの主張は認められた。
この決定は、著名な商標が享受し得る保護範囲の広さを示すものである。似たような趣やデザイン要素をもつ競合商品を市場に投入しようとする者は、直接的な類似性を避けるだけでなく、意図せず関連性を想起させる可能性のある微妙な様式の選択についても慎重であるべきだろう。著名ブランドの権利者にとって、この決定は、ブランドへの投資は商業的価値をもたらすのみならず、他人が「やや近づきすぎた」場合に法的保護が与えられるという点でも有益であることを再確認させるものだ。
本文は こちら (Why Jägermeister’s bottle look still reigns supreme)
