2025-11-10

EU:著名ブランドと同じ名前を持つ人が陥りやすい誤解 - Knijff Trademark Attorneys

デザイン性の高いイタリアのブランド Alessi(アレッシ) は、何十年にもわたり「スタイル」と「エレガンス」の代名詞となってきた。コーヒーポットからコルク抜きに至るまで、すべての製品が自然との暮らしに馴染むデザイン性やユーモアのセンス、そして紛れもないイタリアらしい洗練さを漂わせている。
フィリップ・スタルク、エットレ・ソットサス、ザハ・ハディッドといった世界的デザイナーとコラボレーションしてきたことも、驚くにはあたらない。

しかし、強いブランドには強い保護が必要である。常に、その名声に便乗しようとする個人や企業は存在する。最近、その典型例が現れた。「ALESSI」社が申立てた「ALESSI COMFORT」という家具関連の欧州商標出願に対する異議に関する事件である。

「ALESSI COMFORT」商標を出願したのは、イタリア人のAntonio Alessi氏であった。Alessi氏は当然、イタリアの著名ブランド「ALESSI」を知っていたはずだが、おそらく「自分の名前だから」商標登録しても問題ないと思ったのだろう。これはよくある誤解だ。

答えは「ノー」だ。
特定の姓を持っているというだけでは、その姓を商標として登録する権利が自動的に認められるわけではない。もしそれが許されるなら、商標法は形骸化し、市場は無関係な企業による「CHANEL(シャネル)」ハンドバッグ、「PORSCHE(ポルシェ)」自動車、「PHILIPS(フィリップス)」電子機器であふれ返ることになるだろう。

もっとも、商標権の行使にも制限がある。これは 欧州連合商標理事会規則第14条(EU商標の効力の制限)に定められており、自己の氏名を使用する権利として限定的に認められている。Alessi氏は自分の名前を使用すること自体は可能だが、厳格な条件の下でのみとなる。すなわち、①それが誠実に自分自身を指し示すものであること、②消費者を誤認または混同させない形で使用されること、の二つの条件を満たさなければならない。したがって、家具に「ALESSI」という表示を堂々と付すことは認められない。この例外規定は、「Alessi」という名称を有する法人にも適用されない。 

最終的に、イタリア人のAlessi氏は「ALESSI」社の異議申立てに対して、第14条に依拠することはできず、「ALESSI COMFORT」商標の登録は拒絶された。結局のところ、かなり見通しの甘い試みであったといえる。

本文は こちら (And what if your last name is Alessi?)