世界で最も著名なDJの一人であったスウェーデン出身のアヴィーチー(AVICII)の悲劇的な死は、アヴィーチーの保有していた知的財産権の消滅を意味するものではない。
実際のところ、強固な知的財産ポートフォリオの保有は、相続人が被相続人の遺産を適切に管理することを容易にさせるものだ。残酷な現実ではあるが、著名人が亡くなった後であっても、その人物の氏名に付随する経済的価値は一般に高い水準を維持し続けるのが通例だ。アヴィーチーの場合も例外ではなく、彼の音楽は今なおラジオ、テレビ、クラブなどで日常的に流されている。
被相続人が残した知的財産ポートフォリオの中でも、商標権は故人の氏名を保護するうえで極めて重要な役割を果たす。商標権という独占的権利は、その氏名やロゴ等を使用することができるのは誰で、第三者による使用をコントロールする権能を付与し、さらに侵害行為に対して法的措置を取ることを可能にする。もっとも、当該商標自体が相続人によって継続的に使用されていることが重要である。アヴィーチーの場合には、この点について特別な記念館の設立や多数のグッズ販売などを通じて、十分に管理・運用がなされているようである。
これらの商標権を実際に行使しなければならない場合があることは、最近の一件によって示された。すなわち、商標権者である Avicii AB(アヴィーチーの関連会社) が、スペインの出願人によって飲料を指定して「AVICII」商標を欧州に出願されたことに対し、異議申立てを行ったのである。商標権が適切に登録されていたため、Avicii AB は異議申立を容易に成功させることができた。スペインの出願人は当初この決定に対して不服申立てを行ったものの、手続の途中で方針を転換し審理を取り下げた。
この事例は、重要な示唆を与えている。すなわち、アーティスト名やそれに付随する信用・評判を保護したいのであれば、適時、適切な管理を行うべきであるということである。関係するすべての国で、当該名称を商標として登録しておくことが重要である。そしてこの原則は、世界的なスーパースターにのみ当てはまるものではない。どのようなアーティスト、バンド、インフルエンサーであっても、自らの名称によって経済的価値を形成しうる。したがって、望ましくはその価値を現在および将来にわたり保護できるようにしておくことだ。
本文は こちら (AVICII – Brand crucial for protecting the name of deceased artist)
