トルコで、サッカー選手のゴールポーズでちょっとした混乱があった。
ある日、ワーナー・ブラザースがサッカー選手ケレム・アクトゥルコール(Kerem Aktürkoğlu)に対して訴訟を提起したとの報道がなされた。ところが翌日には、ワーナー・ブラザースはそのような訴訟の存在を全面的に否定し、事案はまるで煙のように消え失せた。
いったい何が起きたのか。サッカー選手が得点後に見せる喜びの表現としてゴールポーズをとることは広く知られている。ケレム・アクトゥルコールも例外ではない。彼は4年間にわたり、呪文を唱えるようなジェスチャーでゴールを喜んだのである。すなわち、魔法使いが見えない杖で呪文を唱えるように腕を振るもので、まさにハリー・ポッターが行う動作と同じものであった。このジェスチャーとハリー・ポッターとの結び付きをさらに強めたのは、ファンから「ケレム・ポッター」と呼ばれるようになったからだが、これはケレム・アクトゥルコールが、ハリー・ポッターの象徴的な丸眼鏡をかけた写真をSNSで共有したからだ。
このような動作はワーナー・ブラザースの商標権を侵害するのか。もちろん、それは相当に無理のある主張となるだろう。サッカー選手のポーズが商標として出願されること自体は時折あるものの、出願された商標が常に登録されるわけではない。ハリー・ポッターの動作は一般的な表現(common property)であり、そのような動作を商標として出願したとしても、初期段階で拒絶される可能性が高い。そして仮にワーナー・ブラザースがこの動作について何らかの権利を有していたとしても、サッカー選手が得点後に見せる喜びの表現は、商品・サービスの商標的使用とは評価し得ない。
ワーナー・ブラザースが訴訟を否定したことで、この一件は結局のところ「茶番」に過ぎなかったこととなった。おそらく、これで良かったのだろう。
